補助金の申請書類を準備していたら「SECURITY ACTIONの自己宣言ID」が必要と言われました。取得にお金や時間がかかるのでしょうか?
費用は一切かかりません。Web上のエントリーフォームから数分で申し込みができ、即座に自己宣言IDと専用ロゴマークの発行を受けられます。
「セキュリティの認証」と聞くと、ISMS(ISO27001)やPマーク(プライバシーマーク)のように数百万円の費用と1年がかりの準備が必要な制度を想像される方が少なくありません。しかし、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が創設した「SECURITY ACTION」は中小企業の実態に寄り添った非常にハードルの低い制度です。
本記事では、中小企業がSECURITY ACTIONを宣言すべき3つの決定的なメリットから、「一つ星」と「二星」の要件の違い、費用ゼロ・Web完結の申請3ステップ、そして宣言後に社内で実践すべき基本方針の運用定着まで網羅的に解説します。
この記事でわかること
- IT導入補助金の申請要件になっているSECURITY ACTIONの仕組みと公的効力
- 一つ星(情報セキュリティ5か条)と二つ星(基本方針の策定・公開)の決定的な違い
- 費用0円・外部審査なしで即日完了するWebエントリーと自己宣言ID取得手順
- 取引先の信用を高めるSECURITY ACTION公式ロゴマークの活用ルール
- 宣言を形骸化させないための情報セキュリティ基本方針の社内周知と年次点検
なぜ今SECURITY ACTIONの宣言が必要なのか?【補助金要件と取引先評価】


IT導入補助金などの公的支援で「申請要件(必須条件)」化
中小企業がSECURITY ACTIONを宣言する最大の直接的動機となっているのが、経済産業省・中小企業庁が主導する各種公的補助金の受給要件です。
現在、「IT導入補助金」のすべての枠(通常枠・インボイス枠・セキュリティ対策推進枠など)において、交付申請の必須要件として「SECURITY ACTIONのいずれかの宣言を行っていること(自己宣言IDの入力)」が義務付けられています。
宣言を行っていなければ、どれほど事業計画が優れていても申請の土台に上がることすらできません。
| 補助金・助成金の種別 | SECURITY ACTIONの要求レベル | 宣言がもたらす具体的な効果 |
|---|---|---|
| IT導入補助金(通常枠・インボイス枠) | 一つ星(★)以上が必須 | 交付申請の必須要件をクリア(未宣言は申請不可) |
| IT導入補助金(セキュリティ対策推進枠) | 二つ星(★★)が必須 | サイバーセキュリティ対策製品導入費用の補助対象化 |
| ものづくり補助金・事業再構築補助金 | 一つ星または二つ星の宣言 | 審査における加点対象(採択率の引き上げ効果) |
| 自治体独自のDX・セキュリティ補助金 | 自治体指定の宣言ランク | 地方自治体が交付するIT化助成金の要件適合 |


補助金申請の締め切り直前に慌てないためにも、事前にSECURITY ACTIONの宣言を済ませてIDを手元に控えておくことが賢明な判断と言えるでしょう。
取引先からのセキュリティチェックシートや入札参加資格への対応
補助金要件にとどまらず、民間企業同士のサプライチェーン管理においてもSECURITY ACTIONの存在感は急速に高まっているのが実情です。
大企業が中小の取引先に対して実施する「セキュリティ監査」や「チェックシート調査」において、第三者認証の有無を問う設問が必ず設けられています。無回答や「対策なし」と答えると、取引停止や新規契約見送りのリスクに直面します。
ISO27001やPマークを持たない中小企業であっても、「SECURITY ACTION 二つ星宣言企業」と回答することで、公的機関の指針に則った情報管理体制を敷いている事実を対外的に証明可能です。
- チェックシート回答工数の大幅削減:「基本方針の有無」「ウイルス対策の実施」などの設問に宣言エビデンスを添付できます。
- 公共入札や官公庁案件の参加資格クリア:自治体や官公庁の入札要件でSECURITY ACTION宣言が加点または条件とされるケースが増加。
- 企業ホームページでの信頼性アピール:公式ロゴマークを自社サイトや名刺に掲載することで、取引先へ安心感を与えられます。


セキュリティ意識の高さをアピールできる営業ツールとしても、SECURITY ACTIONは極めて高い実用性を誇っています。
費用ゼロ・審査なしで即日宣言できる中小企業向け制度の仕組み
中小企業向けに設計された制度であるため、手続きのハードルは極限まで低く設定されている点も見逃せません。
SECURITY ACTIONの申請にあたり、登録料・更新料・ロゴマーク使用料は一切かかりません。完全無料で利用できる公的制度です。
民間の第三者認証(PマークやISMS)とSECURITY ACTIONの比較を一覧で確認してみましょう。
| 制度・認証名 | 取得にかかる費用(目安) | 取得までの期間 | 審査・監査の有無 | 中小企業にとっての主な役割 |
|---|---|---|---|---|
| SECURITY ACTION(一つ星・二星) | 完全無料(0円) | 即日〜数営業日 | なし(自己宣言制) | 手軽に始められる最初の一歩・補助金必須要件 |
| プライバシーマーク(Pマーク) | 60万〜100万円以上 | 6ヶ月〜1年程度 | あり(書類+現地審査) | 個人情報を大量に扱うBtoC企業向け |
| ISMS認証(ISO/IEC 27001) | 100万〜200万円以上 | 8ヶ月〜1年半 | あり(厳格な外部監査) | 大手取引先・金融機関・ITベンダー向け |
このように、多額の予算や専任SEを確保できない少人数企業であっても、本日からすぐに取り組める手軽さが最大の魅力となっています。
「一つ星」と「二星」の違いと中小企業が目指すべき基準


一つ星(★):情報セキュリティ5か条への取り組み
SECURITY ACTIONには「一つ星(★)」と「二つ星(★★)」の2つのランクが用意されています。
「一つ星」は、IPAが中小企業向けに提唱している「情報セキュリティ5か条」に自社で取り組むことを宣言するエントリーランクです。
情報セキュリティ5か条の具体的な内容は、PCやスマートフォンを使うすべての企業にとって当たり前の基本動作ばかりです。
- 第1条:OSやソフトウェアは常に最新の状態に保つ:Windows Updateや各種アプリの自動更新を有効にし、脆弱性を放置しません。
- 第2条:ウイルス対策ソフトを導入し定義ファイルを常に更新する:全社員の端末にセキュリティソフトを常駐させ、最新の脅威に対応。
- 第3条:パスワードを強化する:「英数記号を混ぜた長い文字列」を用い、他のサービスとの使い回しを禁止します。
- 第4条:共有設定を見直す:ファイル共有やクラウドストレージのアクセス権を必要最小限に制限します。
- 第5条:脅威や攻撃の手口を知る:フィッシングメールや詐欺の手口を学び、怪しいリンクや添付ファイルを開きません。
自社の現状をチェックし、これら5項目を社内で実践・徹底することをIPAのWebフォームから誓約するだけで、一つ星の宣言が完了します。
二つ星(★★):情報セキュリティ基本方針の策定と公開
「二つ星」は、一つ星の内容に加えて、より組織的・継続的な情報管理体制を確立した企業に与えられる上位ランクです。
二つ星を宣言するためには、「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」で自社の安全度を測定した上で、「情報セキュリティ基本方針」を定め、自社の公式ホームページ等で外部へ公表する必要があります。
基本方針と聞くと難しく感じられるかもしれませんが、IPAが提供しているひな形テンプレートを活用すれば、専門的な法律知識がなくても半日程度で作成可能です。
| 宣言ランク | 必須となる取り組み要件 | 外部公表の要否 | 適している企業・主な用途 |
|---|---|---|---|
| 一つ星(★) | 「情報セキュリティ5か条」の実践を宣言 | 不要(Web申込みのみ) | IT導入補助金通常枠を急いで申請したい企業 |
| 二つ星(★★) | 5か条 + 自社診断 + 基本方針の策定・外部公開 | 自社Webサイト等で公開必須 | 取引先評価向上・セキュリティ補助金申請企業 |


二つ星を宣言している企業は、社会的な信用度において一つ星企業よりも一段高い評価を獲得できる仕組みと言えるでしょう。
なぜIT導入補助金や取引先評価では「二つ星」が推奨されるのか
自社で宣言を行う場合、最初から「二つ星」を目指すアプローチが推奨されます。
IT導入補助金の「セキュリティ対策推進枠」では、一つ星の宣言では申請条件を満たせず「二つ星」の宣言が必須指定されている点に注意しなければなりません。一つ星で取得した後に二つ星へランクアップ申請する二度手間を避けるためにも、最初から二つ星を取得しておくのが最も効率的です。
また、取引先から送られてくるセキュリティチェックシートでも「セキュリティ基本方針を外部公開しているか」という質問が頻出します。二つ星を宣言していれば、自社サイトの基本方針ページのURLを記載するだけで満点回答となるため、現場の負担軽減に大きく寄与します。
費用ゼロで即日完了!SECURITY ACTIONの申請・自己宣言ステップ


ステップ1:IPA特設サイトでのエントリーと社内現状確認
実際の宣言手続きは、IPAの公式特設サイトからすべてオンラインで完結します。
手続きを進める前に、まずは社内の現状把握としてIPAが提供するWeb診断ツールを実施しましょう。
具体的な初期ステップは以下の通りです。
- 手順1:特設サイトへアクセス:IPA SECURITY ACTION 自己宣言サイトを開きます。
- 手順2:宣言ランクの選択:取得を目指すランクとして「一つ星」または「二つ星」を選択。
- 手順3:自社診断の実施(二つ星の場合):サイト上の「5分でできる!情報セキュリティ自社診断(全25問)」に回答し、自社の強みと課題を把握します。
自社診断の結果が満点でなくても自己宣言は可能です。「これから改善に取り組む」という宣言であるため、現時点での完璧さを心配する必要はありません。
ステップ2:情報セキュリティ基本方針の作成(ひな形の活用)
二つ星を目指す企業は、自己宣言の申し込みを行う前に「情報セキュリティ基本方針」を準備し、自社サイト等に掲載しておく必要があります。
基本方針はゼロから自作する必要はありません。IPAが公式に配布している「情報セキュリティ基本方針(サンプル)」をダウンロードし、自社の社名や実態に合わせて修正するだけで完成します。
基本方針に盛り込むべき標準的な構成要素を整理しました。
| 基本方針の主要構成項目 | 記載する具体的な内容(文面の要点) |
|---|---|
| 基本方針の目的 | 顧客情報や企業機密をサイバー脅威から守り、社会的責任を果たす決意 |
| 対象とする情報資産 | 自社が保有する顧客データ、取引先情報、財務情報、業務システム全般 |
| 法令および規程の遵守 | 個人情報保護法、不正アクセス禁止法、著作権法等の関連法規を遵守する宣言 |
| 社内体制と体制整備 | セキュリティ責任者の配置と、全社員に対する定期的な教育研修の実施 |
| インシデントへの対応 | 万一の情報漏洩やシステム障害発生時における迅速な原因究明と被害拡大防止 |
作成した基本方針は、自社ホームページに「情報セキュリティ基本方針」という独立した固定ページを作成して公開します。Webサイトを持たない企業の場合は、会社案内パンフレットへの印刷掲載やオフィスの見やすい場所への掲示でも要件を満たせます。
ステップ3:自己宣言の申し込みとロゴマーク・自己宣言IDの取得
基本方針の公開が完了したら、いよいよオンライン申請フォームから自己宣言の手続きへと進みましょう。
申し込みフォームには会社情報(法人番号、代表者名、住所、連絡先等)と、公開した基本方針ページのURLを入力します。
- 手順1:自己宣言申込フォームの入力:会社基本情報、担当者連絡先、業種、従業員数を正確に入力。
- 手順2:公開URLの入力(二つ星):自社サイトに掲載した「情報セキュリティ基本方針」のWebアドレスを入力します。
- 手順3:利用規約への同意と送信:規約を確認してチェックを入れ、送信ボタンをクリック。
- 手順4:自己宣言IDとロゴの受領:登録したメールアドレス宛に「自己宣言ID」が即時送付され、専用ロゴマークの画像データがダウンロード可能となります。
発行された「自己宣言ID(英数字のコード)」は、IT導入補助金の申請画面に入力する必須データとなりますので、大切に保管してください。
宣言後にやるべき情報セキュリティ基本方針の周知と社内定着


自社ホームページへの基本方針掲載とロゴマークの活用ルール
自己宣言が受理されると、IPAから公式の「SECURITY ACTION ロゴマーク」の使用権が付与されます。
ロゴマークのデータは自由に加工・変形して使用することは禁止されています。IPAのロゴマーク使用ガイドラインを遵守して正しく掲示しなければなりません。
効果的なロゴマークの活用場所と注意事項をまとめました。
| 活用媒体・掲載場所 | 推奨される活用方法 | 期待できる広報・信頼性向上効果 |
|---|---|---|
| 自社ホームページ(フッター等) | ロゴマーク画像を配置し、IPAの宣言事業者一覧へリンク | サイト訪問者や採用候補者へのクリーンな企業イメージ訴求 |
| 営業用会社案内・パンフレット | 企業概要欄や認証取得一覧にロゴマークをカラー印刷 | 新規商談時における取引先への信頼性アピール |
| 名刺(社員全員) | 表面または裏面の余白にワンポイントでロゴを印刷 | 初対面の顧客に対する情報管理意識の高さを自然にアピール |
| 電子メールの署名欄 | テキストまたは画像で「SECURITY ACTION宣言企業」と明記 | 日常のメール連絡を通じた継続的な安心感の提供 |
公式ロゴを対外的に積極的に発信することで、自社のブランド価値向上につなげていきましょう。
全社員への周知・研修と形骸化を防ぐミニ勉強会の実施
SECURITY ACTIONで最も陥りやすい失敗が、「社長や総務が勝手にWebで宣言しただけで、現場の社員は宣言の存在すら知らない」という完全な形骸化です。
宣言を終えたら、全社朝礼や社内メールを通じて「当社はSECURITY ACTION二つ星を宣言した」という事実を経営陣から社員へ正式にアナウンスすることが第一歩となります。
社内定着を促すための具体的な教育手法は以下の通りです。
- 経営メッセージの発信:なぜセキュリティ宣言をしたのか、顧客の信頼を守るための意義を説明。
- 10分ミニ勉強会の実施:月に1回、情報セキュリティ5か条から1つずつテーマを選び、現場の実務に落とし込んだミニ研修を開催します。
- インシデント報告の奨励:不審なメールを開いてしまった際に、怒られることを恐れず即座に報告できる風土を醸成。


ITツールによる技術的対策と、社員へのリテラシー教育を両輪で回すことが真の防御力につながります。
定期点検チェックシートによる年1回の自己見直しルーティン
SECURITY ACTIONのロゴマーク使用権は、宣言から「2年間」有効と定められている点に留意が必要です。
2年ごとの更新手続き(継続宣言)を忘れると、IPAの宣言事業者リストから除外され、ロゴマークの使用も停止されてしまいます。
有効期限切れを防ぎ、実効性のあるセキュリティ体制を維持するため、年1回の定期見直しを社内スケジュールに組み込みましょう。
- ステップ1:年1回の自己診断再チェック:毎年決まった月(期首や防災月など)に自社診断ツールを再実施。
- ステップ2:基本方針の微修正:クラウドサービスの導入状況やテレワークの実態に合わせて基本方針をアップデートします。
- ステップ3:2年ごとの更新申込み:IPAから届く更新案内メールに従い、Webフォームから継続宣言を実行。
日頃の運用基盤としては、前回の記事「Microsoft 365のセキュリティ初期設定」で解説した多要素認証(MFA)の義務化やアクセス権制限と連動させることで、人為的ミスに依存しない強固な防犯体制を確立できます。
まとめ:形式だけで終わらせない!自社のセキュリティレベルを着実に引き上げよう


SECURITY ACTION宣言の重要メリット総括
SECURITY ACTIONは、中小企業にとって「最もコストパフォーマンスが高く、即効性のある公的セキュリティ宣言制度」です。
- 公的補助金の受給資格獲得:IT導入補助金の交付申請に必須であり、ものづくり補助金等の加点対象となる。
- 初期費用・維持費ゼロ:登録からロゴ利用まで完全に無料であり、外部監査などの金銭的・時間的負担がない。
- 二つ星への最初からの挑戦:基本方針の策定と公開を行う二つ星を取得することで、取引先からのチェックシート要求にも満点回答が可能。
- 対外信用の向上:公式ロゴマークを自社サイトや名刺に掲載し、企業の健全性と安全性を強力にアピール。
「うちはIT企業ではないから関係ない」と放置するのではなく、事業継続のための必須ライセンスとして今すぐ宣言を完了させてください。
中小企業のSECURITY ACTION申請手順と一つ星・二つ星の運用定着
社内のリソース不足によって「基本方針の作成や社内教育まで手が回らない」という場合は、外部の専門サービスを賢く頼ることも検討してください。
専任のセキュリティ担当者がいない中小企業では、外部の情シス代行サービスやセキュリティコンサルティングを活用することで、基本方針の策定から社内研修の実施、クラウド設定の見直しまでを一括して委託可能です。




まずは本日、IPAのサイトから自社診断をスタートさせ、安心・安全な企業基盤への確かな第一歩を踏み出しましょう。
本記事に掲載しているSECURITY ACTION制度の規約、申込み手順、IT導入補助金の公募要領等は2026年時点の公開情報に基づき作成しています。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)および中小企業庁による最新の公式発表や公募要領を必ずご確認の上で申請を行ってください。









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