メーカーに非該当証明書の発行をお願いしたら、「社外秘だから出せない」と断られてしまいました……。このままじゃ通関できなくて納期に間に合いません!
お気持ち、痛いほど分かります。実は、メーカーが該非判定書を出してくれないというのは、輸出実務において「あるある」のトラブルなんです。
いざ海外へ製品や機器を輸出・持ち出ししようとした時、「メーカーが非該当証明書(該非判定書)を出してくれない」という壁にぶつかり、目の前が真っ暗になった経験はないでしょうか。
特に海外メーカーや一部の中小企業では、輸出管理の概念がないケースも多く、依頼しても門前払いされることが多々あります。
この記事を読むと、メーカーが書類を出してくれない時の「合法的な対処法(自己判定のやり方)」や、実務で使える「メーカーへの依頼テンプレート」、さらには最終的な法的リスクの所在が明確に分かります。
経済産業省の公式ガイドラインやCISTEC(安全保障貿易情報センター)の実務手引を根拠に解説するため、税関や社内審査でも堂々と対応できるようになります。
この記事でわかること
- なぜメーカーが該非判定書の発行を渋るのか、その裏事情
- 書類がもらえない時に輸出者が取るべき「自己判定」の具体的手順
- メーカーに断られない「スペックのみの依頼テンプレート」
- 中古品やPCのハンドキャリー時に潜む法的リスクと対処法
- 最終的に頼るべき代行業者や専門家の見極め方
メーカーが非該当証明書(該非判定書)を出してくれない理由


うちの仕入先、何度お願いしても「そういう書類は出せない」の一点張りなんですよ。なんでそんなに嫌がるんですか?
実は、彼らが意地悪をしているわけではないんです。メーカー側にも「出せない(出したくない)切実な理由」が3つほど存在します。
メーカーが書類を出さない理由は、大きく分けて「知識不足」「責任回避」「業務負担」の3つに集約されます。それぞれ詳しく見ていきましょう。
そもそも輸出管理の概念がない(海外メーカーや中小企業)
国内向けにしか製品を作っていない中小企業や、逆に海外メーカーの場合、日本の「外為法に基づくリスト規制」という概念自体を知らないケースが多々あります。
【現場の悲鳴:メーカー消失や非協力のリアル】
【引用】「非該当証明書…。10年以上前に買った海外のフォトフレームだよ。入手出来ないし、メーカーのHPも無いよ。梱包したのに荷を解いて調べて…会社にも家にも居たくない。きっつー」
このように、古い機材や海外製品の場合、メーカー自体が存在しなかったり、日本の法律に準拠した書類作成を拒否されたりするのは日常茶飯事です。
特に海外メーカー製の製品を日本から再輸出する場合、日本のフォーマットである非該当証明書を求めても、「何それ?うちの国では関係ないよ」と突き返されるのがオチです。
そもそも、日本の外為法は日本の輸出者を縛る法律であり、海外メーカーや国内専業メーカーには直接的な法的義務がありません。
そのため、「よくわからない法律の書類にハンコを押すのは嫌だ」という自己防衛が働き、拒絶につながるのです。
誤判定による法的リスクと責任追及を恐れている
該非判定は、万が一間違えて規制対象品を「非該当」として輸出してしまうと、重大な外為法違反に問われるリスクがあります。
経済産業省のガイドラインでも、該非判定には「製品や技術の内容、スペックが分かる資料が必要」と明記されており、不確かな情報で判定することは厳しく戒められています。(出典: METI)
メーカー側としては、「自分たちが直接輸出するわけでもないのに、わざわざリスクを背負って一筆書きたくない」というのが本音です。
もし自社が発行した証明書が原因で輸出者が違法輸出を行い、公安や経産省の調査が入った場合、メーカー側も「幇助」や「管理体制の不備」を問われかねません。
特に、汎用品であっても一部のスペックが規制値をわずかに超えているような、
グレーな製品の場合、メーカーの法務・コンプライアンス部門がストップをかけるケースが後を絶ちません。
構成部品の把握などスペック調査の業務負担が大きい
製品が複雑になればなるほど、内部に使われているすべての部品や素材のスペック(周波数、材質、精度など)をリスト規制と照らし合わせる必要があります。
型式違いや顧客向けのカスタマイズ品などを含めると、この調査にかかる業務負担は膨大です。
専門の輸出管理部署がない企業では、物理的に対応不可能なのです。
ある部品一つをとっても、その部品のメーカーにさらに該非判定を依頼しなければならず、サプライチェーン全体を巻き込んだ壮大な伝言ゲームになってしまいます。
「該非判定よくわかってないメーカー相手だとなかなか苦労しますね…」
このように、メーカーの営業担当者レベルでは「該非判定」という言葉すら知らないことも多く、社内の技術部や品質保証部に確認を取るだけで数週間かかることも珍しくありません。
結果的に「社外秘なので出せない」「対応するマンパワーがない」という理由で断られることになります。
需要者や用途まで確認する「キャッチオール規制」の壁
リスト規制に該当しなくても、「キャッチオール規制(用途や需要者が大量破壊兵器等の開発に関わらないかの確認)」の壁があります。
「実務をやっている側からすると、リスト規制は該非判定書を要求されるのでメーカーがかなりきちんと押さえている。問題はキャッチオール規制と不作為も含め違法性を認識して輸出される場合。国内外で流通した先までは追いきれない。」
メーカーからすれば、購入した商社が「どこに・誰に・何のために」輸出するのか完全に把握することは難しく、これが「安全のために出さない」という判断に直結します。
経産省は、16項(キャッチオール)については「需要者・用途要件の確認が必須」と警告しており、単なるスペック判定だけでは完結しません。(出典: METI)
そのため、メーカー側は「自社の製品が海外でどのように使われるか保証できない以上、非該当証明書は発行できない」というロジックで発行を拒むのです。
- メーカーが証明書を出さないのは意地悪ではなく「リスクと手間の回避」
- 日本の外為法を知らない海外企業や中小企業にはそもそも話が通じない
- キャッチオール規制の存在により、用途不明な製品への証明書発行はメーカーにとってリスクが高すぎる
これらの実情を踏まえると、メーカーに無理に書類を要求し続けるのは時間と労力の無駄です。では、どのように自力で解決すればよいのでしょうか。
該非判定でメーカーから書類がもらえない時の対処法
事情は分かりました。でも、書類がないと輸出できないじゃないですか!どうすればいいんですか?
大丈夫です。メーカーから証明書の「紙」をもらう必要はありません。必要なのは「スペックの情報」だけなんです。
経産省も「輸出者が自ら判定すること」を前提としています。つまり、メーカーが判定してくれなくても、自分で判定(自己判定)すれば良いのです。具体的な4つのステップを解説します。
カタログ・仕様書・図面などの根拠資料を集める
まずはメーカーの公式HPやカタログから、該当製品のスペックシート、仕様書、図面などをかき集めます。
材質、出力、周波数帯などの数値が分かれば、それが自己判定の「根拠資料」となります。
証明書という形にこだわらず、事実確認ができる資料を揃えることが第一歩です。
例えば、工作機械であれば「位置決め精度」や「同時制御軸数」、化学品であれば「CAS番号」や「含有率」が記載されたSDS(安全データシート)を入手します。
万が一、カタログにこれらの情報が記載されていない場合は、メーカーのサポート窓口に問い合わせて仕様書を取り寄せます。
重要なのは、「これがこの製品の公式スペックである」という客観的な証拠を手元に残すことです。
CISTECのパラメータシート等を用いて「自己判定」する
情報が集まったら、CISTEC(安全保障貿易情報センター)が発行している「パラメータシート」や、経産省の「マトリクス表」を用いて自己判定を行います。
製品のスペックと法令の規制数値を一つ一つ照らし合わせ、「非該当」であることを自社の責任において文書化します。これが税関や社内向けの該非判定書として機能します。
「オイラ会社で該非判定書を自分で作成して提出して許可受けてたけど調べても難しいんだよね」
実際に実務担当者の多くが、メーカーから書類が出ない場合は自分で法令とスペックをにらめっこして自己判定を行っています。
経産省のマトリクス表案内でも、Excelの検索機能を使って法令と照合する運用が推奨されており、必ずしも高度な専門知識がなくても、スペックさえ分かっていれば判定は可能です。(出典: METI)
証明書ではなくスペックのみを尋ねる(依頼テンプレート)
カタログに載っていない細かい数値が必要な場合、メーカーに「該非判定書を出して」と依頼すると断られる確率が高まります。
そうではなく、「〇〇の材質と最大出力を教えてください」とピンポイントで質問します。
これにより、メーカー側の心理的ハードル(判定責任)と業務負担を下げ、必要な情報を引き出しやすくなります。
以下は実務で使える依頼メールのテンプレートです。
【メーカーへのスペック依頼テンプレート】
件名:【仕様確認のお願い】〇〇(型番)の製品スペックについて
〇〇株式会社 サポート担当者様
平素はお世話になっております。
〇〇商事の△△と申します。
貴社製品「〇〇(型番)」の社内管理にあたり、
カタログ等で確認できなかった以下の仕様について教えていただけないでしょうか。
- 主要材質(特に〇〇合金の使用有無)
- 最大動作周波数
- 〇〇機能の有無
※該非判定書や証明書の発行をお願いするものではなく、
あくまで単なる製品仕様の確認となります。
メールでのご回答、または仕様書のPDF等をいただけますと幸いです。
お手数をおかけしますが、よろしくお願いいたします。
このように、「証明書はいらないので数値だけ教えて」というスタンスを取ることで、回答を得られる確率が劇的に上がります。
専門家(行政書士)や代行業者に相談・依頼する
自社に知識がなく、どうしても自己判定が難しい場合は、輸出管理を専門とする行政書士や代行業者に依頼するのも手です。
「非該当証明書と言う物なのですが、一度作成すると1年間は有効だったかと思います。僕が作成したのは5年近く前でしたがその時は一件あたり数千円だったと記憶しております。」
数千円〜数万円の費用はかかりますが、確実な判定結果と根拠資料を作成してくれるため、トラブルを未然に防ぐ保険として有効です。
ただし、代行業者に頼む場合でも「製品の基本スペック」は自社で用意して渡す必要があるため、事前の情報収集は避けられません。
また、経産省は「輸出者自身の責任」を明示しているため、代行を使っても最終責任は自社にあることは忘れないでください。
- 非該当証明書という「紙」ではなく「根拠となるスペック資料」を集める
- カタログや仕様書を元に、CISTECのパラメータシートで「自己判定」する
- メーカーには「判定して」ではなく「スペックの数値を教えて」と依頼する
このように、メーカーに頼らず自力で判定ルートを確保できれば、通関のストップを回避できます。しかし、自己判定を行うにあたって絶対に忘れてはならない「法的リスク」が存在します。
該非判定書なしで輸出する法的リスクと実務上の注意点
自分で判定して間違ってたらどうなるんだ?やっぱりメーカーに責任取らせるべきじゃないのか?
残念ながら、外為法上の責任は100%「輸出者」にあります。メーカーのせいにすることは絶対にできないんです。
「メーカーが判定を間違えたから」という言い訳は一切通用しません。輸出者として負うべき法的リスクと、陥りがちな誤解を正しく理解しておきましょう。
外為法違反の最終的な法的責任は100%「輸出者」にある
外為法の規制対象は「輸出を行う者」です。
仮にメーカーが間違った非該当証明書を出してきて、それを信じて輸出したとしても、最終的に罰則(刑事罰や輸出禁止処分)を受けるのは輸出者(荷主)です。
「外為法のよくある勘違いとして、・知らなかったから関係ない・メーカーが該非判定を間違えたから輸出者に責任はない ということがあります。こういう場合でも輸出者に責任は問われますので、十分ご注意ください…」
このように、実務の専門家も「メーカー責任論」を明確に否定しています。
万が一違法輸出が発覚した場合、「メーカーの書類を鵜呑みにしただけで、自社での確認を怠った」とみなされ、最悪の場合は刑事告発や数年間の輸出禁止処分(企業の死活問題)に発展します。
だからこそ、メーカーの書類の有無にかかわらず、輸出者自身が根拠資料をもって確認するプロセスが不可欠なのです。
リスト規制だけでなくキャッチオール規制の確認も必須
スペックに基づくリスト規制の判定をクリアして「非該当」となっても、キャッチオール規制の確認を怠ると違法輸出になる可能性があります。
「キャッチオール規制の範囲の広さを象徴するのが『(誰が見ても兵器に関わり有りそうな)リスト規制品目以外の全品目(食料、木材等を除く)』という記載だと思う。」
キャッチオール規制では、木材や食料品などを除き、ほぼすべての貨物が対象となります。
相手国の企業が軍事開発に関わっていないか(懸念顧客リストの照合)、用途に問題はないかを輸出者自身の責任で確認しなければなりません。
「非該当だから何でも自由に輸出していい」と勘違いしていると、足元をすくわれます。
中古品や社用PCの海外持ち出し(ハンドキャリー)でも規制対象
製品の販売目的の輸出だけでなく、展示会用に持ち出す機材や、社員が海外出張に持参する社用PC(ハンドキャリー)であっても外為法の対象となります。
「ド○パラで海外に持ってく社PCを注文すると該非判定書発行してくれないので自分で取得する羽目になるという知見がある」
「真面目な話、ハンドキャリーで海外にカラム等を運ぶ場合、輸出規制の該非を判定した書類(非該当証明書)を用意しておくと税関へのお守りになってよいです。」
海外出張時に機材を持ち出す際、税関で「これの非該当証明書はありますか?」と呼び止められるケースが増えています。
特に高スペックなPCや測定機器は規制対象(該当品)になりやすいため、メーカーから書類が出ない場合は、出発前に必ず自己判定による証明書(お守り)を作成して携帯する必要があります。
【誤解】経産省は「メーカーの非該当証明書が必須」とは定めていない
非常に多くの人が誤解していますが、経済産業省は「メーカー発行の非該当証明書を提出せよ」とは一言も言っていません。
経産省の公式サイトでは、非該当証明書の参考様式が公開されていますが、「経産省への提出書類ではない」と明確に記載されています。(出典: METI)
経産省が求めているのは「法令に基づき、根拠資料をもって非該当であることを確認した」という事実です。
メーカー発行の書類は、あくまでその確認のための「補助資料」に過ぎないのです。
したがって、「メーカーが書類を出してくれないから輸出を諦める」というのは、法律の趣旨を正しく理解していないことによる機会損失と言えます。
- 外為法違反の責任は、メーカーではなく100%「輸出者」が負う
- スペックのリスト規制をクリアしても、用途や客先(キャッチオール規制)の確認は必須
- ハンドキャリー(出張時のPC持ち出し等)でも自己判定の書類は税関対策として有効
よくある質問
- 自己判定で作成した該非判定書は、決められたフォーマットがありますか?
-
法的に定められた指定フォーマットはありません。ただし、経済産業省が公開している「参考様式」や、CISTECのパラメータシートを活用するのが実務上最も確実で一般的です。これらに根拠資料(カタログ等)を添付して保管します。
- 海外のメーカーから購入した製品を輸出する場合、海外の証明書は使えますか?
-
そのままでは日本の税関や審査で通用しない可能性があります。該非判定はあくまで「日本の外為法」に基づく必要があるため、海外メーカーのスペック情報を元に、日本基準での判定書類を自社で作成し直すのが基本です。
- 個人で中古のパソコンを海外に売る場合でも、該非判定書は必要ですか?
-
厳密には外為法の対象となるため、リスト規制・キャッチオール規制の確認が必要です。実務上は個人の少額取引で税関に止められるケースは稀ですが、高スペックな機材の場合は念のためメーカーの仕様書等を携帯することをおすすめします。
本記事の情報は一般的な輸出管理の実務を解説したものであり、個別の製品に対する非該当証明や法的保証を行うものではありません。最終的な該非判定や輸出の可否については、ご自身の責任において経済産業省の最新法令を確認するか、専門家へご相談ください。





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