街中で見かけるあの“ちょっと不気味でかわいい”キャラクター、ラブブ。
なぜこれほどまでにZ世代は熱狂しているのでしょうか?
単なるブームで片付けてしまうのは、あまりにももったいないかもしれません。ラブブはなぜ人気なのでしょうか。この記事を読めば、あなたはラブブ人気の裏側にある、Z世代の新しい価値観“感情資本”と、それを巧みに操るPOP MARTのしたたかなマーケティング戦略の全貌を理解できます。
なぜ人気なのか、という問いへの答えだけでなく、その経済的価値、SNSでの拡散力の秘密、さらには偽物の見分け方まで、ラブブを多角的に解剖します。最新の市場データや専門家の分析、そしてSNSで実際に投稿されているファンの“生の声”を交えながら、この文化的現象を紐解いていきます。
この記事でわかること
- ラブブがZ世代に圧倒的に支持される、3つの心理的・社会的理由
- 「感情資本」という新しいキーワードで読み解く現代の消費行動
- POP MARTの巧みなIP戦略と、ブームを仕掛けるマーケティングの裏側
- プレミア価格が付くほどの経済価値と、投資対象としての可能性
- SNSでのリアルな声から見る、ファンコミュニティの熱狂
すべてはここから始まった:ラブブとは何者か?
ここでは、ラブブというキャラクターの基本的な情報と、その誕生の背景について解説します。多くの人々を魅了するこのキャラクターが、どのような世界観から生まれ、どのようにして私たちの前に現れたのかを見ていきましょう。
香港の絵本から生まれた「森の精霊」:デザイナー、カシン・ルン氏の世界観
ラブブは、香港生まれ、オランダ育ちのアーティスト、カシン・ルン氏が2015年に発表した絵本『THE MONSTERS』シリーズに登場するキャラクターです。(出典: wikipedia)
カシン・ルン氏は、幼少期を過ごしたオランダでの経験から、北欧神話やヨーロッパのファンタジーの世界観に大きな影響を受けています。ラブブは、“森の精霊”や“いたずら好きなモンスター”として描かれ、そのユニークなデザインと背景にある物語が、多くの人々の想像力を掻き立てています。(出典: nuigurumi-guide)
“ちょっと不気味で、でもかわいい”:人の心を掴むデザインの秘密
ラブブの最大の特徴は、その絶妙なデザインにあります。ウサギのような長い耳、そしてニヤリと笑う口元からのぞくギザギザの歯。一見すると「不気味」とも取れる要素と、「かわいい」と感じる要素が同居しています。この“ぶさカワ”な魅力が、見る者に強い印象を与え、一度見たら忘れられない存在感を放つのです。
専門家は、このデザインが心理学でいう「不気味の谷」現象を巧みに利用していると指摘しています。親しみやすさと同時に少しの違和感を感じさせることで、かえって人々の心に深く刻まれるのです。(出典: fan.main.jp)
POP MARTとの出会い:世界へ羽ばたいたIP戦略の第一歩
ラブブが世界的な人気キャラクターとなる上で欠かせなかったのが、中国のトイメーカー「POP MART」との出会いです。POP MARTは、ラブブのIP(知的財産)に関するマスターライセンス契約を結び、その商品をグローバルに展開しました。(出典: note)
特に、中に何が入っているか分からない「ブラインドボックス」形式での販売は、コレクション欲を煽り、ラブブの人気を不動のものとしました。こうして、香港の絵本から生まれた一キャラクターは、POP MARTの巧みな戦略によって、世界中の人々を熱狂させる存在へと成長を遂げたのです。
ラブブはなぜ人気?Z世代の心を掴んだ3つの理由
ここでは、ラブブがなぜこれほどまでにZ世代から絶大な支持を得ているのか、その核心に迫ります。単なるキャラクター人気では説明できない、現代社会の価値観を反映した3つの理由を解き明かしていきます。
ラブブ人気の背景には、Z世代特有の消費行動や心理が隠されています。彼らのインサイトをさらに深く知りたい方は、こちらの記事もあわせてお読みください。
→ Z世代はなぜラブブにハマる?消費行動と感情設計を徹底分析
理由①「共感」の時代が生んだ“感情資本”という新しい価値観
現代のZ世代は、モノを所有することそのものよりも、それにまつわるストーリーや、それを通じて得られる「共感」を重視する傾向があります。
社会学者のエヴァ・イルーズやアーリー・ラッセル・ホックシールドらが提唱した「感情資本」という概念は、まさにこの現象を説明するものです。これは、人々の感情的な経験や共感が、経済的な価値を持つ資本へと転換される状況を指します。(出典: jstage.jst.go.jp)
ラブブの消費は、まさにこの「感情資本」の獲得行為と言えます。ファンは、ラブブを手に入れることで得られる喜びや興奮、そしてそれをSNSで共有し、他者から「いいね」やコメントをもらうことで得られる共感や承認を求めているのです。ラブブは、単なるぬいぐるみではなく、感情を媒介するシンボルとしての役割を担っています。
理由② 開けるまで分からない興奮:ブラインドボックスが刺激するコレクション欲
POP MARTが採用したブラインドボックス形式は、ラブブの人気を加速させた大きな要因です。箱を開けるまでどのデザインのラブブが手に入るか分からないという「偶然性」は、ギャンブルにも似た興奮と中毒性を生み出します。
この販売方法は、消費者の「全種類集めたい」というコレクション欲を強く刺激します。また、希少な「シークレット」モデルの存在は、その価値をさらに高め、ファンをより一層熱狂させるのです。この開封体験そのものが一つのイベントとなり、SNSでの共有を促すことで、さらなる拡散を生んでいます。(出典: thistokyo.com)
理由③「#labubu」が世界を駆け巡る:SNS時代のUGC(ユーザー生成コンテンツ)拡散力
ラブブ人気を語る上で、SNSの存在は欠かせません。特にTikTokやInstagramでは、「#labubu」というハッシュタグを付けた投稿が100万件以上も存在し、ファンによるUGC(ユーザー生成コンテンツ)が爆発的に拡散されています。
開封動画(Unboxing)や、様々な場所にラブブを連れて行って撮影する「ぬい撮り」、手に入れたラブブを自分好みに飾る投稿など、ファンは思い思いの方法でラブブとの日常をSNSで共有します。こうしたUGCは、企業側からの広告よりも信頼性が高く、見た人に「自分も欲しい」と思わせる強力な伝播力を持っています。BLACKPINKのLISAのような世界的なスターがSNSに投稿したことも、その拡散を後押ししました。(出典: kicks-blog.com)
ブームの仕掛け人「POP MART」の巧みなマーケティング戦略
ここでは、ラブブを世界的ブームに押し上げた立役者、POP MARTのマーケティング戦略について深掘りします。彼らがどのようにして熱狂的なファンを生み出し、維持しているのか、その巧みな手腕を見ていきましょう。
体験を売る「ブラインドボックス」:なぜ人は何度も買ってしまうのか?
前述の通り、POP MARTの代名詞とも言えるのがブラインドボックス戦略です。これは単なる販売手法ではなく、「体験を売る」という思想に基づいています。
何が出るかわからないドキドキ感、箱を開ける瞬間の高揚感、そして目当てのキャラクターが出た時の達成感。これら一連の感情的な体験が、消費者に強い満足感を与え、リピート購入へと繋げているのです。
心理学的には、このようなランダム性のある報酬は、脳の報酬系を刺激し、ドーパミンを放出させることが知られています。これが、何度も挑戦したくなる中毒性を生み出すメカニズムです。
ユニクロからセレブまで:話題が途切れないコラボレーション戦略
POP MARTは、ラブブの魅力をさらに広げるため、積極的なコラボレーション戦略を展開しています。2025年には、ファッションブランドのユニクロとコラボしたTシャツやスウェットが発売され、オンラインでは即日完売するほどの人気を博しました。(出典: kicks-blog.com)
こうした異業種とのコラボは、既存のファン層以外にもラブブの存在を知らせる絶好の機会となります。また、BLACKPINKのLISAをはじめとする世界的なセレブリティがラブブを愛用している様子をSNSで発信することも、その人気とブランド価値を飛躍的に高める要因となっています。
倍率30倍超えも!「抽選販売」で演出する圧倒的な希少価値
POP MARTは、新商品や限定品の販売において、抽選販売という手法を多用します。都市部の店舗では、抽選倍率が10倍から30倍以上になることも珍しくありません。(出典: lifestyle.assist-all.co.jp)
この「手に入りにくさ」が、商品の希少価値を極限まで高めます。当選したファンは、その幸運をSNSで報告し、それがまた新たな話題を呼びます。
抽選への参加、当選発表、そして商品購入という一連の流れが、ファンにとっての一大イベントとなっているのです。この巧みな希少性の演出が、ラブブを単なる商品ではなく、誰もが欲しがる特別な存在へと押し上げています。
「かわいい」が資産になる時代:ラブブの経済的価値と投資的可能性
ここでは、ラブブが単なるキャラクターグッズの域を超え、経済的な価値を持つ「資産」として注目されている側面を解説します。現代において「かわいい」がどのようにして資産となり得るのか、そのメカニズムとリスクに迫ります。
この記事ではラブブの経済的価値の概要に触れましたが、「投資」という観点から、より深くその価値とリスクを掘り下げたい方もいるでしょう。
→ ラブブは投資対象になるか?IPビジネスとして見る“かわいい”の資産価値
定価の10倍以上も!プレミア価格が生まれる市場メカニズム
ラブブの限定品は、二次流通市場において、定価の数倍から数十倍というプレミア価格で取引されることが常態化しています。
例えば、定価2,500円程度の商品が、フリマアプリで3万円以上の価格で売買されるケースも少なくありません。Vansとのコラボモデルが初日に155万円から500万円に高騰したという事例もあります。(出典: sachimomo88.blog)
このようなプレミア価格が生まれる背景には、POP MARTによる徹底した希少性戦略があります。限定生産や抽選販売によって供給をコントロールし、常に需要が供給を上回る状況を作り出しているのです。この需給のアンバランスが、二次市場での価格高騰を生み出す原動力となっています。
これは投資か、投機か?専門家が分析するラブブの資産価値
ラブブの価格高騰を受け、一部では「投資対象」として注目する動きもあります。実際に、2025年に北京のオークションで、ある限定フィギュアが2200万円という驚異的な価格で落札された事例も報告されています。(出典: businessinsider.jp)
しかし、専門家は、このようなコレクタブルトイ市場は価格変動が激しく、投機的な側面が強いと警鐘を鳴らしています。
人気や話題性といった感情的な要因に価格が大きく左右されるため、伝統的な金融資産とはリスクの性質が大きく異なります。ラブブを資産として捉える際には、その価値の源泉がどこにあるのかを慎重に見極める必要があります。
【要注意】急増する偽物・コピー品の実態と本物の見分け方
人気と価格の高騰は、残念ながら偽物やコピー品の流通という問題も引き起こしています。フリマアプリなどでは、精巧に作られた偽物が正規品として販売されているケースが後を絶ちません。
正規品と偽物を見分けるためには、いくつかのポイントがあります。正規品には、箱、タグ、ホログラムシール、そして個体を識別するためのQRコードが付属しています。
特に、QRコードを読み込んで公式サイトで認証できるかどうかは、真贋を判断する上で重要な手がかりとなります。安全に正規品を手に入れるためには、公式ストアや正規取扱店での購入が最も推奨されます。(出典: kanteikyoku.jp)
あわせて読みたい:ラブブの偽物対策 完全ガイド
偽物の巧妙な手口は日々進化しています。写真付きで具体的な見分け方を解説したこちらの完全ガイドで、あなたの大切なコレクションを守りましょう。
→ 【写真で解説】ラブブ偽物の見分け方|QRコード・タグで本物か一発確認!
SNSでのリアルな声:ファンはラブブに何をみているのか?
ここでは、SNS上に投稿されたファンのリアルな声を通して、彼らがラブブにどのような価値を見出し、どのように楽しんでいるのかを探ります。客観的な分析だけでは見えてこない、熱狂の源泉がここにあります。
「開封の儀」「ぬい活」:TikTokとInstagramで見られる熱狂の実例
SNS、特にTikTokやInstagramで「#labubu」と検索すると、ファンたちの熱狂的な投稿が無数に見つかります。その代表例が、ブラインドボックスを開封する様子を撮影した「開封の儀」です。何が出るかわからないドキドキ感と、目当てのキャラクターが出た瞬間の喜びを共有するこの動画スタイルは、見る者にも興奮を伝播させます。
また、手に入れたラブブのぬいぐるみを様々な場所に連れて行って写真を撮る「ぬい活」も人気のUGCです。カフェでお茶をしたり、旅行先の景色と一緒に写ったりと、まるでラブブが生きているパートナーであるかのように日常を共有する様子が投稿されています。
「この子と旅する」「うちの子自慢」:単なるモノを超えたパートナーとしての存在
ファンの投稿を見ていると、彼らがラブブを単なる「モノ」としてではなく、感情を共有する「パートナー」として捉えていることが分かります。「うちの子が一番かわいい」「この子といると癒される」といったコメントからは、深い愛情と親密さが伝わってきます。
このように、自分の分身や相棒のようにラブブに感情移入し、その存在をSNSで「自慢」することは、ファンにとって自己表現の一環となっています。ラブブは、彼らのアイデンティティを構成する重要な要素となっているのです。
ファンコミュニティが支える、持続的な人気の構造
ラブブの人気を支えているのは、個々のファンの熱狂だけではありません。SNSを通じて形成された強力なファンコミュニティの存在が、その人気を持続的なものにしています。
ファン同士が情報を交換し、お互いの投稿に「いいね」やコメントを送り合うことで、コミュニティ内の一体感や熱量が高まっていきます。
新しいコラボ情報や限定品の発売情報なども、このコミュニティを通じて瞬く間に拡散されます。この強固なコミュニティこそが、ラブブ人気が一時的なブームで終わらない理由の一つと言えるでしょう。
よくある質問:ラブブに関するQ&A
ここでは、ラブブに関して多くの人が抱く疑問について、Q&A形式で分かりやすくお答えします。
- QQ1: ラブブはどこで買えますか?
- A
A1: 全国のPOP MART直営店、公式オンラインストア、一部のバラエティショップなどで購入できます。ただし、人気商品は抽選販売や入場制限がある場合があります。
- QQ2: なぜ「恋愛運が上がる」と言われているのですか?
- A
A2: TikTokなどのSNSで、ラブブを手に入れたユーザーが「良いことがあった」と投稿したことから広まったミーム(流行)の一種と考えられます。科学的根拠はありませんが、それも人気の要因の一つです。
- QQ3: デザイナーのカシン・ルン氏は他にどんな作品を作っていますか?
- A
A3: 『THE MONSTERS』シリーズには、ラブブ以外にも様々な魅力的なキャラクターが登場します。また、彼はフィギュアデザイナーとして数多くの作品を発表しています。
- QQ4: これからラブブはどうなっていくと思いますか?
- A
A4: 今後も様々なブランドとのコラボレーションや、新しいシリーズの展開が予想されます。また、キャラクターのIP(知的財産)としての価値もさらに高まっていく可能性があります。
まとめ:ラブブはなぜ人気なのか?その答えは“時代の必然”だった
▼次のステップ:未来のトレンドを予測する
ラブブの成功法則を理解したあなたは、次に現れる新しいトレンドの波を予測できる視点を手に入れたはずです。こちらの記事で、未来のヒットの作り方をさらに深く学んでみましょう。
→ ラブブの次は何か?未来のトレンドを予測する3つの視点と注目企業
ラブブはなぜ人気なのでしょうか。本記事では、その人気の秘密を「感情資本」というキーワードを軸に、多角的に分析してきました。最後に、本記事のポイントを振り返ってみましょう。
本記事のポイント
- ラブブは香港生まれ、オランダ育ちのアーティスト、カシン・ルン氏が生んだキャラクターである。
- Z世代の「共感」を求める価値観と「感情資本」が人気の根底にある。
- POP MARTの巧みなブラインドボックス戦略がコレクション欲を刺激した。
- SNSでのUGC(ユーザー生成コンテンツ)が爆発的な拡散を後押しした。
- ユニクロなど他ブランドとのコラボが話題を継続させた。
- 抽選販売による希少性の演出がブランド価値を高めた。
- プレミア価格が付くなど、経済的な資産としての側面も持つ。
- 偽物も多く出回っており、購入には注意が必要である。
- ファンコミュニティの熱狂が人気を持続させている。
- ラブブの人気は、現代の消費社会を映し出す必然的な現象と言える。
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