「新NISAで金投資を始めたいけれど、本当に損をせずに運用できるのだろうか?」
そう迷っている方は要注意です。多くのサイトではメリットばかりが語られますが、実際に始めてから気づく“落とし穴”こそ、初心者にとって一番危険なポイントです。
この記事では、退職金で金投資を始めたAさんが陥った典型的な失敗──「高値掴み」「為替リスクの見落とし」「パニック売り」──を実例で紹介します。これらは誰にでも起こり得る「初心者の罠」であり、あなた自身が明日同じ道を歩んでしまう可能性もあります。
読み進めれば、金投資のデメリットを単に知るだけでなく、どうすれば同じ失敗を避けられるのかが具体的に分かります。リスクを正しく理解し、賢く活用できれば、金はあなたの資産を守る心強い味方になるでしょう。
この記事でわかること
- 初心者がやりがちな金投資の典型的な失敗パターンがわかる
- 「高値掴み」「為替リスク」「パニック売り」の本当の怖さがわかる
- 金の構造的なデメリット(配当がない等)が理解できる
- 失敗を避けて、賢く金投資を始めるための具体的な対策がわかる
【失敗談①】連日の最高値更新ニュース…「乗り遅れたくない!」という焦り
ここからは、ある投資初心者Aさんの失敗談を追体験していきましょう。
主人公Aさんの紹介(ごく普通の慎重派だった彼が…)
Aさんは、長年勤め上げた会社を定年退職したばかりの60代男性。退職金というまとまったお金を手にしたものの、基本的には慎重派で、これまでは定期預金しかしてきませんでした。
忍び寄る「FOMO(取り残される恐怖)」という罠
2025年秋、Aさんが退職したタイミングは、奇しくも円建て金価格が史上初の1g=20,000円を突破し、ニュースやSNSが「金投資ブーム」に沸いていたまさにその時でした。(出典: 楽天証券メディア)
「今からでも金を買えば、資産がもっと増えるかもしれない」「このチャンスを逃したら、一生後悔するかもしれない」
Aさんの心の中には、FOMO(Fear of Missing Out:取り残される恐怖)という、投資家を不合理な行動に駆り立てる心理的な罠が静かに忍び寄っていました。
そして彼は、退職金で「一括投資」という決断をしてしまう
慎重派だったはずのAさんは、市場の熱狂的な雰囲気に後押しされ、「えいっ」と退職金の中から数百万円を、一つの金ETFに一括で投資してしまいました。
【デメリット①】高値掴みのリスク
Aさんのこの行動こそ、初心者が最も陥りやすい失敗である「高値掴み」です。市場が最も盛り上がっている時は、往々にして価格のピーク(天井)に近いことが多く、その後の価格調整で大きな含み損を抱えるリスクが非常に高いのです。
【失敗談②】金価格は下がっていないのに資産が目減り…円高という見えない敵
投資を始めた当初、Aさんの資産は順調に増えているように見えました。しかし数週間後、彼は奇妙な現象に気づきます。
Aさんを襲った混乱「なぜ資産が減っているんだ?」
ニュースで報じられる金価格(ドル建て)は、ほとんど変わっていない。それなのに、自分の証券口座の評価額(円建て)は、日を追うごとに減っていくのです。「何かがおかしい…」Aさんは混乱しました。
為替の仕組み:円高が円建て資産に与える影響
Aさんが見落としていたもの、それは「為替リスク」でした。
彼が投資を始めた後、それまで続いていた円安が反転し、急速に「円高」が進んでいたのです。金の国際価格がドル建てで変わらなくても、1ドル=150円が140円になれば、円に換算した時の価値は下がってしまいます。
【デメリット②】為替変動のリスク
金投資は、金そのものの価格変動だけでなく、常に為替変動のリスクにも晒されています。特に為替の知識がないまま投資を始めると、Aさんのように「見えない敵」に資産を削られることになりかねません。
【対策】為替ヘッジという選択肢を知っておく
なお、金関連の投資信託には「為替ヘッジあり」という選択肢もあります。これは、為替変動のリスクを抑える仕組みですが、その分コストが上乗せされるというトレードオフがあります。円高リスクが特に不安な場合は、このような商品も検討の価値があります。(出典: A-tm証券)
【失敗談③】「もう耐えられない…」パニック売りで損失確定
含み損は日増しに膨らんでいきました。「金は安全資産のはずなのに…」という思い込みは、Aさんの心を激しく揺さぶりました。
Aさんの心を支配した「損失回避バイアス」
毎日評価額を確認するたびに、Aさんの頭をよぎるのは「これ以上損をしたくない」という強い恐怖心でした。これは、利益を得る喜びよりも損失を回避したいという気持ちが強く働く「損失回避バイアス」という心理的な罠です。
冷静さを失ったAさんは、ある朝、ついに耐えきれなくなり、保有していた金ETFをすべて売却してしまいました。価格が下がりきった、まさに底値圏での売却でした。
2013年「ゴールド・ショック」でも同じ過ちが繰り返されていた
皮肉なことに、Aさんが売却した数週間後から、金価格は再び上昇に転じました。彼の行動は、2013年に金価格が約30%も急落した「ゴールド・ショック」の際に、多くの個人投資家が犯した失敗と全く同じだったのです。彼らもパニックになって底値で売却し、その後の回復の恩恵を受けられませんでした。(出典: BrandReValue)
【デメリット③】短期売買・パニック売りのリスク
日々の値動きに一喜一憂し、感情に任せて売買してしまうと、Aさんのように最も不利なタイミングで損失を確定させてしまう危険性が高まります。
【Aさんの気づき】そもそも金は「お金を生む資産」ではなかった
大きな損失を出してしまったAさんは、猛省し、金投資について一から勉強し直しました。そして、自分の根本的な勘違いに気づきます。
株式投資との決定的な違い:配当(インカムゲイン)がない
Aさんは、金も株式と同じように、持っているだけで何かしらの利益を生むものだと漠然と考えていました。しかし、金は配当金や利息を一切生みません。
資産が雪だるま式に増える「複利効果」が期待できない
S&P500に連動する投資信託であれば、年率1.4%程度の分配金が期待でき、それを再投資することで資産が雪だるま式に増えていく「複利効果」が見込めます。しかし、金にはそのエンジンがありません。(出典: Money Canvas BK.MUFG)
【デメリット④】資産の成長性が低い
金はあくまで「守りの資産」であり、資産を積極的に増やしていく「攻めの資産」ではない。Aさんは、この金の構造的なデメリットを全く理解していなかったのです。
Aさんの失敗から学ぶ、金投資で成功するための3つの鉄則
Aさんの失敗談は、私たちに多くの教訓を与えてくれます。同じ過ちを繰り返さないために、金投資で守るべき3つの鉄則を学びましょう。
鉄則1:「一括投資」ではなく「時間分散(積立投資)」で高値掴みを避ける
もしAさんが一括投資ではなく、毎月決まった額をコツコツ購入する「積立投資」をしていれば、購入価格が平準化され、高値掴みのダメージを大きく減らすことができました。
鉄則2:「短期売買」ではなく「長期保有」で心に余裕を持つ
金は、短期的な利益を狙う商品ではありません。5年、10年といった長期的な視点で保有し続けることで、日々の価格変動に惑わされず、パニック売りを防ぐことができます。
鉄則3:「集中投資」ではなく「分散投資」でリスクを管理する
Aさんのように、資産の大部分を一つの資産に集中させるのは非常に危険です。金はあくまでポートフォリオの一部とし、株式など他の資産と組み合わせる「分散投資」を徹底することが重要です。
【デメリット⑤】現物投資と比べて手数料は安いが…
Aさんが選んだのは金融商品でしたが、もし現物投資(金地金や純金積立)を選んでいれば、さらに別のデメリットに直面していました。現物投資は購入時手数料や保管コストが割高(年3〜4%相当の負担になる例も)になりがちです。
一方で、新NISAで買える金ETFや投資信託は、信託報酬が年率0.2%〜0.5%台の低コストな商品も多く、コスト面では有利です。(出典: BrandReValue)
金投資のデメリットに関するよくある質問
- QQ1: 純金積立や金地金は新NISAで買えますか?
- A
A1: いいえ、買えません。新NISAの非課税投資の対象となるのは、金ETFや金投資信託といった金融商品のみです。金地金や金貨などの現物や、証券会社が提供する純金積立はNISAの対象外なので注意しましょう。(出典: つみたてNISA.jp)
- QQ2: 価格が下がってきたら、一度売って(損切りして)買い直した方が良いですか?
- A
A2: 初心者の方にはおすすめしません。多くの場合、それがさらなる損失に繋がる「パニック売り」となります。Aさんの失敗を教訓に、長期積立のルールを貫きましょう。
- QQ3: 失敗しない「買い時」はいつですか?
- A
A3: 完璧なタイミングを予測することはプロでも不可能です。「時間分散(積立投資)」を行うことで、タイミングを気にする必要がなくなります。
- QQ4: デメリットを聞くと、やっぱり金投資はしない方が良いのでしょうか?
- A
A4: いいえ、そんなことはありません。デメリットを正しく理解し、今回学んだ「長期・積立・分散」という対策を講じることで、金はあなたの資産を守る強力な味方になります。
まとめ:失敗から学び、金投資を「守りの資産」として賢く活用しよう
この記事では、投資初心者Aさんの失敗談を通して、新NISAでの金投資におけるリアルなデメリットと、それを避けるための具体的な対策を解説しました。
本記事のポイント
あなたが次に取るべきアクション
金投資のメリットだけでなく、今回学んだデメリットも踏まえた上で、ご自身のポートフォリオに金が必要か、もう一度考えてみましょう。そして、もし始めると決めたなら、必ずAさんの失敗を教訓に、「少額からの積立投資」でスタートしてください。
失敗から学ぶことで、あなたの投資家としての第一歩は、より賢く、より安全なものになるはずです。
コメント