「安全資産のはずの金が、なぜ今下がっているの?」
その明確な金価格が下落している理由を知りたくありませんか?ニュースで断片的に語られる『金利』や『ドル高』といった言葉の意味が、実はよく分かっていない…そんな方も多いのではないでしょうか。
この記事を読めば、金価格を動かす5つの主な理由と、それらが相互にどう影響し合っているのか、その複雑な経済の仕組みが面白いほどよく分かります。もう、ニュースの表面的な情報に惑わされることはありません。
単に理由を羅列するだけでなく、「実質金利」や「ドル指数」といった重要キーワードの基本から、図解を交えて体系的に解説します。
本記事は、FRBや世界ゴールドカウンシル(WGC)などの公的機関が発表している客観的なデータに基づき、専門的な内容を分かりやすく紐解いていきます。
この記事でわかること
- 金価格が下落する5つの明確な理由
- 「実質金利」と金価格がシーソーの関係にあるのはなぜか?
- なぜ「ドル高」になると金は売られるのか?
- ニュースの裏側がわかる、経済指標の読み解き方
本記事は、金価格が下落する「理由」の解説に特化した深掘り記事です。まず全体像を把握したい方は、以下の記事からお読みいただくことをお勧めします。
あわせて読みたい:金価格 下落の理由と今後の見通し:なぜ下がる?今どう動くべきか
【結論】金価格が下落する理由は、主に5つの経済要因の組み合わせ
ここでは、まず金価格が下落する理由の全体像を提示します。金価格は単一の理由で動くのではなく、「金融要因」「需給要因」「市場心理」という3つのカテゴリーに分類される、5つの主な要因が複雑に絡み合って決定されています。
金価格を動かす5大要因の相関
(※ここに「5つの要因が金価格にどう影響するか」を示すインフォグラフィックを配置するイメージ)
- 金融要因①:米国の実質金利(最重要)
- 金融要因②:米ドルの価値(ドル指数)
- 需給要因③:投資家と中央銀行の動向
- 市場心理要因④:株式市場との関係
- 市場心理要因⑤:短期的な投機と利益確定
これら5つの要因が、綱引きのように金価格を押し上げたり、押し下げたりしています。以下で、それぞれの要因を詳しく見ていきましょう。
【金価格下落の理由①】実質金利の上昇:金利を生まない金の魅力が低下
読者が最も理解に苦しむ、しかし最も重要な金価格下落の理由が「実質金利」との関係です。このメカニズムを理解することが、金価格の動きを読み解く鍵となります。
「実質金利」とは?名目金利とインフレ率で決まる本当のリターン
実質金利とは、私たちが普段目にする銀行預金や国債の利率(名目金利)から、将来の物価上昇率(期待インフレ率)を差し引いた、実質的なリターンを示す金利のことです。(出典: 野村證券)
【用語解説】実質金利
実質金利 = 名目金利 − 期待インフレ率
例えば、銀行預金の金利(名目金利)が3%でも、物価(インフレ率)が2%上昇すると、お金の実質的な価値は1%しか増えていません。この1%が実質金利です。実質金利は政策金利だけでなくインフレ期待値も影響するため、FRBの声明・CPIなども合わせて注目すべきです。
【図解】実質金利と金価格のシーソーゲーム
金は、それ自体が利息や配当を生むことはありません。一方で、国債などを保有していれば、実質金利分のリターンが期待できます。
そのため、実質金利が上昇すると、金利がもらえる国債などの魅力が高まり、相対的に金の魅力が低下します。 この関係は、専門家の間でよく「シーソー」や「綱引き」に例えられます。(出典: 株式会社TAKE-OFF)
2025年現在のFRBの金融政策と実質金利の状況
2025年10月現在、FRB(米連邦準備制度理事会)はインフレ抑制のために高い政策金利を維持しています。これにより、米国の実質金利も高い水準にあり、これが現在の金価格下落の最大の理由となっているのです。(出典: 日本経済新聞)
【金価格下落の理由②】ドル高の進行:ドル建て資産である金の割高感
次に重要な金価格下落の理由が、「ドル高」、つまり米ドルの価値が上がっていることです。これも金利と密接に関係しています。
ドルの総合的な価値を示す「ドル指数(DXY)」とは?
ドル指数(DXY)とは、世界の主要な6つの通貨(ユーロ、円、ポンドなど)に対して、米ドルがどれくらいの強さを持っているかを示す指標です。この指数が上がれば「ドル高」、下がれば「ドル安」を意味します。(出典: IG証券)
なぜドル高になると、金は売られるのか?
国際的な金の取引は、すべて米ドルを基準に行われます。そのため、ドルの価値が上がると(ドル高)、日本人投資家が円で金を買う場合のように、他国の通貨から見ると金が割高になってしまいます。
その結果、世界的な金の需要が減退し、価格が下落するのです。このため、金価格とドル指数は一般的に「逆相関」の関係にあると言われます。(出典: IG証券)
「安全資産」なのに金とドルが逆の動きをする理由
金とドルは、どちらも市場が不安定な時に買われる「安全資産」と呼ばれますが、その性質は異なります。
現在の局面は、米国の高金利政策によってドルの魅力が高まっているため、安全資産の中でもドルが優先され、金が売られる展開となっています。(出典: 日本経済新聞)
【金価格下落の理由③】需給バランスの変化:ETFからの資金流出
金も最終的には「モノ」であるため、需要と供給のバランスが価格を決定します。これも金価格下落の理由を理解する上で欠かせない視点です。
WGCの最新データで見る4つの金需要セクター
金の需要は、大きく分けて以下の4つのセクターから成り立っています。ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)の2025年第2四半期レポートによると、世界の総需要は堅調です。(出典: Investing News)
- 宝飾品需要: 価格高騰の影響でやや減少。
- 投資需要: ETFからは資金が流出しているが、地金・コインへの投資は旺盛。
- 中央銀行の需要: 脱ドル化を背景に、歴史的に高い水準の購入が継続。
- 工業用需要: やや減少。
短期的な価格を動かす「金ETF」からの資金流出
特に短期的な価格変動に大きな影響を与えるのが、金ETF(上場投資信託)からの資金の流出入です。短期マネーの流入・流出で変動幅が大きくなったのが2025年の特徴で、過熱感と利益確定売りが重なりました。
2025年の金価格下落局面では、高金利や株高を背景に、個人投資家などが利益確定のために金ETFを売却する動きが見られました。この短期的な売り圧力が、価格を下げる一因となっています。
長期的な価格を下支えする「中央銀行」の金購入
一方で、長期的な視点では、中国やインド、トルコといった国々の中央銀行が、外貨準備として金の保有量を増やし続けています。
2025年Q2は中国・インド・トルコなどが主要な買い手となり、前年同期比ではやや減速も、全体では依然として歴史的高水準で推移しています。これは、米ドルへの過度な依存を避ける「脱ドル化」という世界的な大きな流れの一環であり、金価格の強力な下支え要因となっています。(出典: World Gold Council)
【金価格下落の理由④⑤】市場心理:リスクオンムードと利益確定売り
最後に、合理的な経済指標だけでは説明できない、市場に参加する人間の「心理」も金価格下落の理由として重要です。
好調な株式市場へ資金がシフトする「リスクオン」とは?
2025年は、AIブームなどを背景に米国株式市場が好調です。このように市場全体が楽観的な雰囲気(リスクオン)になると、投資家はより高いリターンを求めて、安全資産である金よりも、成長が期待できる株式へと資金を移す傾向があります。
【用語解説】リスクオン・リスクオフ
- リスクオン: 投資家が積極的にリスクを取り、株式などの資産に投資する市場状態。
- リスクオフ: 投資家がリスクを避け、国債や金などの安全資産に資金を移す市場状態。
短期的な急騰後に必ず起きる「利益確定売り」のメカニズム
金価格が短期間で急騰すると、多くの投資家が含み益を抱えることになります。その結果、「利益が出ているうちに売って、利益を確定させたい」という売り注文が集中し、これが価格の急落を引き起こすことがあります。
2025年10月の下落も、直前の2ヶ月で約26%も上昇した後の、典型的な利益確定売りが一因と見られています。
ここまで金価格が下落する理由を解説してきましたが、これらの理由を理解すると、今後の価格がどうなるかの予想も立てやすくなります。次の記事では、専門家による具体的な価格予想を深掘りしています。
あわせて読みたい:金価格 予想 下落から見る投資戦略:次に備える長期の見通し
金価格下落の理由から判断する、今後の投資戦略
ここまで解説した金価格下落の理由を理解すると、それを投資判断に活かすことができます。
どの「理由」に注目すれば、買い時が見えてくるのか?
結論として、最も注目すべきは「実質金利」の動向です。
FRBが利下げに転じ、実質金利が低下する局面は、歴史的に見て金価格が上昇しやすい絶好のタイミングと言えます。2025年現在、市場は2026年前半の利下げを織り込み始めており、多くの長期投資家がこのタイミングをうかがっています。
【歴史に学ぶ】2013年バーナンキ・ショック時の各指標の動き
2013年の「バーナンキ・ショック」では、FRBの量的緩和縮小示唆をきっかけに米国10年債利回りが急上昇し、ドル指数も上昇。それに伴い、金価格は28%も急落しました。これは、まさに「金利上昇・ドル高・金下落」という、現在の状況と似た典型的なパターンです。(出典: 楽天証券)
この歴史的な事例は、FRBの金融政策がいかに金価格に大きな影響を与えるかを示しています。
金価格下落の理由が分かると、次に気になるのは「具体的にいつ、何を買えばいいのか?」ということではないでしょうか。次の記事では、下落局面での具体的な買い時や投資手法について解説しています。
あわせて読みたい:金地金 買い時はいつ? 下落相場での賢い購入タイミングと判断軸
金価格の変動理由に関するよくある質問
- QQ1: 円安なのに、なぜ円建ての金価格も下がるのですか?
- A
A1: ドル建て価格の下落幅が、円安による価格上昇効果を上回っているためです。円建て価格は「ドル建て価格 × ドル円為替レート」で決まるため、両方の影響を受けます。
- QQ2: 有事の金と言われるのに、なぜ紛争があっても価格が上がらないことがあるのですか?
- A
A2: 地政学リスクは確かに金の価格を押し上げる要因の一つですが、それ以上に金利や為替といった金融要因の影響が強い場合、価格は下落することがあります。
- QQ3: 専門家の間でも、どの理由が一番重要視されていますか?
- A
A3: 多くの専門家は、長期的な価格を決定づける最も重要な要因として「実質金利」を挙げています。
▼次のステップ:具体的な買い時を判断する
金価格が下落する理由をマスターした今、次はいよいよ「いつ買うか」という具体的な行動計画を立てる段階です。こちらの記事が、あなたの次のアクションをサポートします。
→ 金地金 買い時はいつ? 下落相場での賢い購入タイミングと判断軸

まとめ:金価格下落の理由は「金利」と「ドル」にあり
本記事では、金価格下落の理由を5つの側面から体系的に解説しました。
本記事のポイント
- 金価格下落の最大の理由は「実質金利の上昇」と「ドル高」
- 金利を生まない金は、金利が高い局面では魅力が相対的に低下する
- ドル建てで取引される金は、ドル高になると割高感から売られやすい
- 短期的にはETFからの資金流出や利益確定売りも価格を押し下げる
- 長期的には中央銀行の買いが価格を下支えしている
- これらの理由を理解することで、ニュースの裏側が読めるようになる


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