【専門家解説】トカラ列島の地震で津波の心配は?発生確率が低い3つの科学的理由

トカラ列島地震における津波の心配について解説するサムネイル。「リスク極低」というテキストと、盾で守られた家のアイコンが特徴。 トカラ列島 地震

連日続くトカラ列島での群発地震。そのたびに発表される速報で「津波の心配はありません」という一文を見て、少しホッとすると同時に、「本当に大丈夫なのだろうか?」「いつか大きな津波が来るのでは?」という、拭いきれない不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

結論から言うと、現在の地震活動において、専門家は津波が発生する可能性は極めて低いと分析しています。

大切なのは、「大丈夫」という言葉だけを信じるのではなく、「なぜ大丈夫なのか」という科学的な根拠を知ることです。その知識が、いざという時の冷静な判断力に繋がります。この記事では、津波発生のメカニズムと今回の地震のデータを照らし合わせながら、その理由を分かりやすく解説します。

※この記事では「津波のリスク」に特化して解説します。トカラ列島地震の最新状況や、防災対策全体のチェックリストは、まずはこちらの総合解説記事をご覧ください。
【総合解説】トカラ列島地震 最新情報と今後の注意点


【結論】なぜトカラ地震で津波の心配が少ないのか?3つの科学的根拠

ここでは、専門家や気象庁が「津波のリスクは低い」と判断している、明確な3つの科学的理由を解説します。この3つのポイントを押さえるだけで、ニュース速報の見方が変わるはずです。

理由①:地震の規模(M)が津波発生の基準に達していない

大きな津波を発生させるには、海水を大きく動かすための巨大なエネルギーが必要です。一般的に、津波警報が検討されるような津波が発生する目安は、マグニチュード7.0以上とされています。

今回のトカラ列島の群発地震では、最も大きなものでもM5.5であり、この基準には全く達していません。

理由②:震源が深く、断層のタイプが「横ずれ」である

津波の発生には、地震の規模だけでなく、その「起き方」も大きく関係します。今回の地震は、津波が起きにくい性質を持っています。

  • 震源の深さ: 震源が海底のごく浅い場所だと、そのエネルギーが直接海水を動かしますが、今回の地震は約20kmと比較的深い場所で発生しており、海水への影響が小さくなります。
  • 断層のタイプ: 最も重要なのがこのポイントです。今回の地震は、海底が上下に動かない「横ずれ断層型」が主です。詳しくは後述しますが、このタイプは海水を大きく持ち上げないため、津波の原因になりにくいのです。

【一目でわかる比較表】津波が起きやすい地震 vs 今回の地震

この比較表を見れば、なぜ津波のリスクが低いのかが一目瞭然です。

条件⚠️ 津波が起きやすい地震✅ 今回のトカラ列島地震
① 地震の規模 (M)M7.0以上最大でもM5.5
② 震源の深さ浅い(特に20km未満)比較的深い(約20km)
③ 断層のタイプ縦ずれ断層横ずれ断層型

このように、津波を発生させる主要な条件のいずれにも、今回の地震は当てはまっていないことが分かります。


知っておきたい津波の基礎知識|警報の種類と発生のメカニズム

ここでは、今後の防災にも役立つ、津波に関する普遍的な知識を解説します。これを知っておけば、ご自身でニュース速報からリスクを判断する力が身につきます。

意外と知らない?気象庁の「大津波警報・津波警報・注意報」の違い

気象庁が発表する津波情報は、予想される津波の高さによって3種類に分かれています。

  • 津波注意報: 予想高さ 0.2m〜1m。海岸から離れ、高台に避難が必要です。
  • 津波警報: 予想高さ 1m〜3m。沿岸部の住民は、高台や避難ビルへの避難が必要です。
  • 大津波警報: 予想高さ 3m超。木造家屋が全壊するレベル。より高い場所へ、直ちに避難が必要です。

【図解】津波が起きる断層・起きない断層の違いとは?

(※ここに、「縦ずれ断層」と「横ずれ断層」の動きを比較するシンプルな図解の挿入を推奨します)

なぜ断層のタイプが重要なのでしょうか。

  • 縦ずれ断層(逆断層・正断層): こちらが津波の主な原因です。断層が上下に大きくズレることで、その上にある海底が急激に隆起または沈降します。これにより、海水全体が大きく持ち上げられたり引き込まれたりして、巨大な波(津波)が発生します。
  • 横ずれ断層: 一方、トカラ列島の地震で多いこのタイプは、断層が水平(横)にすれ違うように動きます。海底の上下動がほとんどないため、海水を大きく動かすことがなく、津波の原因になりにくいのです。

震源の「深さ」が津波の大きさを左右する理由

震源が浅ければ浅いほど、地震のエネルギーが海水に直接伝わりやすくなります。逆に震源が深いと、エネルギーが海底に到達するまでに減衰してしまうため、海水を動かす力が弱まり、大きな津波にはなりにくいのです。


リスクはゼロではない。知っておくべき鹿児島県の最大津波想定

ここまで「現在の地震では津波のリスクは低い」と解説してきましたが、それは「トカラ列島近海で津波が絶対に起きない」という意味ではありません。日頃の備えのために、最大クラスのリスクも知っておくことが重要です。

もしトカラ近海でM8クラスの地震が起きたら?(鹿児島県発表の被害想定)

鹿児島県が過去に公表した被害想定では、トカラ列島近海でマグニチュード8.2の巨大地震が発生した場合、最大で8.6mの津波がトカラ列島の一部を襲う可能性があるとシミュレーションされています。

この想定と「現在の群発地震」は規模が全く違う

ここで冷静に認識すべきは、このM8.2という想定は、現在のM5.5クラスの地震とはエネルギーの規模が約1,000倍も違う、全く別次元の巨大地震を仮定したものである、という点です。現在の群発地震が、直ちにこの最悪のシナリオに繋がるわけではありません。

だからこそ、日頃の避難経路の確認が重要になる

しかし、このような最大リスクの想定があるからこそ、日頃から「もし津波警報が出たら、どこに逃げるか?」という避難場所や避難経路をご家族で確認しておくことが、何よりも重要な防災対策となるのです。


津波に関するQ&A

Q
Q1: 今回は大丈夫でも、次は危ないのでは?
A

A1: その可能性は誰にも否定できません。だからこそ、「今回は大丈夫」という情報で安心するだけでなく、今回得た「津波発生のメカニズム」の知識を基に、日頃から防災意識を高め、ご自身の地域のハザードマップを確認するなど、具体的な備えを続けることが非常に重要です。

Q
Q2: 海外の巨大地震で、日本に津波が来ることはありますか?
A

A2: はい、あります。これを「遠地津波」と呼びます。チリやインドネシアなど、遠く離れた場所で起きた巨大地震による津波が、何時間もかけて日本に到達することがあります。この場合、揺れを感じなくても津波警報が発表されるため、必ず気象庁からの情報に注意してください。

Q
Q3: 津波注意報が出たら、具体的にどうすればいいですか?
A

A3: たとえ0.2mの津波でも、人の足元をすくうには十分な威力があります。津波注意報が出されたら、絶対に海岸や川の河口に近づかず、速やかに海から離れて、できるだけ高い場所に避難するのが基本行動です。


まとめ:正しい知識で津波を恐れず、冷静に備えよう

今回は、トカラ列島の群発地震に伴う津波のリスクについて、その科学的な根拠を解説しました。

  • 今回の地震で津波のリスクが低いのは、規模・深さ・断層の型という明確な科学的理由があります。
  • 津波発生のメカニズムを正しく知ることで、ニュース速報に惑わされず、冷静に状況を判断する力が身につきます。
  • ただし、リスクはゼロではありません。この知識を安心材料とするだけでなく、万が一に備え、避難経路の確認など、日頃の防災対策を見直すきっかけにすることが大切です。

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