暴落に強い銘柄の選び方|5つの基準で探すディフェンシブ株

「暴落に強い銘柄の『選び方』を学ぶ」というテキストと、定性と定量を比較する天秤のアイコンが描かれた画像。銘柄選定の基準を解説していることを示唆。 株価大暴落の備え

「暴落に備えたいけど、結局どの株を買えばいいの?」――。多くの投資家が抱える、切実な悩みです。ネット上には「暴落に強いおすすめ銘柄10選」といった記事が溢れていますが、そのリストを鵜呑みにするのは非常に危険です。なぜなら、その銘柄が”なぜ”強いのかを理解していなければ、少し状況が変わっただけですぐに手放してしまうからです。

この記事では、単なるおすすめ銘柄の紹介はしません。その代わり、あなた自身が、自分の力で暴落に強い銘柄を見つけ出すための「一生モノの選び方の基準」を、5つのステップで徹底的に解説します。

この記事を読み終える頃には、あなたはもう他人任せの銘柄選びから卒業し、自信を持って自分だけのディフェンシブ株ポートフォリオを構築するスキルを手にしているはずです。

※この記事では暴落に強い銘柄の選び方というテーマに特化して解説します。銘柄選びを含む、資産防衛全体の戦略をまず知りたい方は、こちらのまとめ記事をご覧ください。
株価大暴落の備え|初心者でも分かる5つの対策と資産防衛術


  1. そもそも「ディフェンシブ銘柄」とは?なぜ暴落に強いのか
    1. 景気の波に左右されない「守り」の株
    2. 【ロジック】不景気でも需要が落ちないビジネスモデルとは?
    3. 代表的な4つのディフェンシブセクター
  2. 【5つの基準】暴落に強い銘柄の具体的な選び方・見極め方
    1. 基準①:事業内容の分かりやすさと安定性(定性) – 10年後も必要とされ続けるか?
    2. 基準②:業界内での競争優位性(定性) – 価格決定力はあるか?
    3. 基準③:財務の健全性(定量) – 自己資本比率は40%以上か?
    4. 基準④:収益力(定量) – 効率的に利益を稼げているか?
    5. 基準⑤:株主還元の安定性(定量) – 無理のない配当を続けているか?
  3. 【実践】スクリーニングツールでディフェンシブ銘柄を探す3ステップ
    1. STEP1:証券会社のスクリーニングツールを開く
    2. STEP2:「選び方の基準」を具体的な数値で条件設定する
    3. STEP3:出てきた候補を一つずつ分析する
  4. 知っておくべきディフェンシブ投資の注意点とデメリット
    1. デメリット①:好景気では市場平均に劣後しやすい
    2. デメリット②:「ディフェンシブ」でも暴落時は下落する
    3. 注意点:「高配当」というだけで飛びつかない(配当性向の罠)
  5. 【FAQ】暴落に強い銘柄に関するよくある質問
  6. まとめ:基準を学べば、暴落は怖くない

そもそも「ディフェンシブ銘柄」とは?なぜ暴落に強いのか

ここでは、本題に入るための前提知識を解説します。なぜ「ディフェンシブ」と呼ばれるのか、その強さの源泉であるロジックを理解することが、銘柄選びの第一歩です。

景気の波に左右されない「守り」の株

ディフェンシブ銘柄とは、その名の通り、守り(ディフェンス)に優れた性質を持つ銘柄群のこと。好景気の時には市場平均ほどの急成長は期待できない反面、不景気や株価暴落の局面で、株価の下落率が市場全体に比べて小さくなる傾向があります。

【ロジック】不景気でも需要が落ちないビジネスモデルとは?

なぜ、ディフェンシブ銘柄は暴落に強いのでしょうか。その答えは、彼らが提供する商品やサービスにあります。それは、私たちの生活に不可欠で、景気が悪くなっても需要が極端に落ち込むことのないものです。

例えば、不景気だからといって食事の回数を減らしたり、病気になっても病院に行くのをやめたり、スマートフォンを解約したりする人は少ないでしょう。この「安定した需要」こそが、企業の売上を支え、株価の安定に繋がるのです。

代表的な4つのディフェンシブセクター

このロジックに当てはまる代表的な業種(セクター)は、以下の4つです。

  1. 生活必需品: 食料品、飲料、洗剤、トイレットペーパーなど。
  2. ヘルスケア: 医薬品、医療サービス、介護など。
  3. 通信: 大手携帯キャリア、インターネット回線など。
  4. 公共事業: 電力、ガス、鉄道など。

銘柄を選ぶ際は、まずこれらのセクターに属しているかを確認するのが基本となります。

ディフェンシブ銘柄の具体的な例や、景気敏感株との違いについてさらに詳しく知りたい方は、以下の解説も参考になります。
ディフェンシブ銘柄とは?下落局面で底堅い値動きに!?(auカブコム証券)


【5つの基準】暴落に強い銘柄の具体的な選び方・見極め方

ここからが本題です。ディフェンシブ銘柄を自力で見つけるための、具体的な「5つの評価基準」を解説します。このモノサシを使えば、企業の強さを多角的に判断できるようになります。

基準①:事業内容の分かりやすさと安定性(定性) – 10年後も必要とされ続けるか?

最初の基準は、その会社が「何をしてお金を稼いでいるのか」を、あなたが簡単に説明できるかどうかです。複雑で理解できないビジネスには投資しない、というのは投資の神様ウォーレン・バフェットも実践する鉄則。10年後、20年後も、社会で必要とされ続けるであろう、堅実で分かりやすい事業内容の企業を選びましょう。

基準②:業界内での競争優位性(定性) – 価格決定力はあるか?

次に、その企業が業界内で「強い立場」にいるかを確認します。他社には真似できない独自の技術や強力なブランド力、高い市場シェアを持っている企業は、価格競争に巻き込まれにくく、安定して利益を上げ続けることができます。多少値上げをしても顧客が離れないような、強いビジネスを持つ企業が理想です。

基準③:財務の健全性(定量) – 自己資本比率は40%以上か?

企業の体力を示す最も分かりやすい指標の一つが「自己資本比率」です。これは、会社の全資産のうち、返済不要の純粋な自己資金がどれくらいの割合を占めるかを示すもの。この比率が高いほど、借金が少なく、倒産しにくい「筋肉質な会社」と言えます。

明確な基準はありませんが、一般的に40%以上あれば安全性が高いと判断されることが多いです。

基準④:収益力(定量) – 効率的に利益を稼げているか?

財務が健全でも、本業でしっかり稼げていなければ意味がありません。企業の収益力は「営業利益率」で確認しましょう。売上に対して、本業の儲けである営業利益がどれだけ残ったかを示す指標で、この数値が高いほど、ビジネスの競争力や効率性が高いと判断できます。

基準⑤:株主還元の安定性(定量) – 無理のない配当を続けているか?

暴落時の心の支えになるのが「配当金」です。何十年も配当を出し続けている、あるいは増やし続けている「連続増配銘柄」は、業績が安定している証拠であり、ディフェンシブ銘柄の有力候補です。

ただし、単純に配当利回りが高いだけで選ぶのは危険。「配当性向(利益のうち何%を配当に回したか)」も必ず確認しましょう。これが高すぎる(例えば80%超)場合、無理な配当で将来の成長投資資金を削っている可能性があり、注意が必要です。


【実践】スクリーニングツールでディフェンシブ銘柄を探す3ステップ

学んだ基準を使って、実際に候補銘柄を探してみましょう。多くのネット証券が無料で提供する「スクリーニングツール」を使えば、誰でも簡単に実践できます。

STEP1:証券会社のスクリーニングツールを開く

まずは、お使いの証券会社のウェブサイトにログインし、株式取引メニューの中から「スクリーニング」や「銘柄検索」といった機能を探して開きます。

STEP2:「選び方の基準」を具体的な数値で条件設定する

次に、これまで学んだ基準を、具体的な検索条件として入力していきます。以下に設定例を示します。

  • 市場: プライム
  • セクター: 食料品、医薬品、情報・通信、電気・ガス、陸運 など
  • 自己資本比率: 40%以上
  • 営業利益率: 10%以上
  • 配当利回り: 3%以上
  • 配当性向: 80%以下

これらの条件を組み合わせることで、基準を満たす候補銘柄が自動的にリストアップされます。

STEP3:出てきた候補を一つずつ分析する

最後に、スクリーニングで出てきた候補企業について、一社ずつ事業内容や近年の業績を確認し、基準①や基準②で解説した「定性的な強さ」を持っているかを判断します。この地道な作業こそが、あなただけの優良なディフェンシブ銘柄を見つけるための鍵となります。

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知っておくべきディフェンシブ投資の注意点とデメリット

ディフェンシブ銘柄は万能ではありません。投資する前に、知っておくべき注意点とデメリットも理解しておきましょう。

デメリット①:好景気では市場平均に劣後しやすい

ディフェンシブ銘柄の最大のデメリットは、市場全体が活況な「好景気」の局面では、ハイテク株などの成長株に比べて株価の上昇が緩やかになる傾向があることです。「守りに強い」分、「攻めは弱い」と覚えておきましょう。

デメリット②:「ディフェンシブ」でも暴落時は下落する

どれだけ守りに優れた銘柄でも、株価大暴落のような市場全体のパニックに巻き込まれれば、株価は下落します。「絶対に下がらない株」ではないことは理解しておきましょう。あくまで「下落率が市場平均よりマシになる傾向がある」という位置づけです。

注意点:「高配当」というだけで飛びつかない(配当性向の罠)

前述の通り、配当利回りの高さだけで投資を決めると、業績の悪化ですぐに減配(配当金が減ること)や無配(配当がなくなること)になるリスクがあります。必ず企業の利益水準と「配当性向」を確認し、持続可能な配当であるかを見極めることが重要です。


【FAQ】暴落に強い銘柄に関するよくある質問

Q
Q1: ディフェンシブ銘柄は、いつ買うのがベストですか?
A

A1: ディフェンシブ銘柄は、ポートフォリオの安定性を高める目的で、いつでも組み入れておく価値があります。その上で、市場全体が下落している暴落時は、普段よりも割安な価格で買える良い機会と言えるでしょう。

Q
Q2: 紹介された基準をすべて満たす銘柄が見つかりません。どうすればいいですか?
A

A2: 5つの基準は理想形であり、すべてを完璧に満たす企業は多くありません。例えば「財務は抜群に良いが、配当は少し低い」といった企業はたくさんあります。ご自身が何を最も重視するか(安定性か、配当かなど)で優先順位をつけ、基準を少し緩めて探してみるのが良いでしょう。

Q
Q3: 米国株でも、選び方の基準は同じですか?
A

A3: はい、全く同じ考え方で応用できます。コカ・コーラ(生活必需品)やジョンソン・エンド・ジョンソン(ヘルスケア)といった企業は、米国を代表するディフェンシブ銘柄です。ビジネスモデルの強さや財務の健全性といった普遍的な基準で評価することが重要です。


まとめ:基準を学べば、暴落は怖くない

この記事では、暴落に強いディフェンシブ銘柄の「選び方」を、具体的な5つの基準に基づいて解説してきました。もうあなたは、他人の推奨銘柄リストに頼る必要はありません。自分だけの「銘柄選びのモノサシ」を手に入れたからです。

このスキルは、一度身につければ、これからの長い投資人生において、あなたを何度も助けてくれる強力な武器となるはずです。

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