台風が過ぎ去り、ようやく静けさを取り戻したものの、「家は大丈夫だっただろうか…」と不安で落ち着かない時間を過ごしていることと思います。屋根や壁、窓など、どこから確認すれば良いのか、そして何より、どうすれば安全に点検できるのか、途方に暮れてしまいますよね。
ご安心ください。この記事は、国民生活センターや日本損害保険協会などの公的機関が発表している情報や、建築業界で推奨されている安全基準に基づき、あなたが二次災害に遭うことなく、安全に家の状態を確認し、次のステップに進むための台風後の家のチェックリストです。
ご自身で安全にできる点検リストから、万が一の際の保険請求をスムーズに進める手順、悪質な業者から身を守る方法まで、あなたが今やるべきことの全てを、信頼できる情報に基づいて具体的に解説します。
※この記事では関東・東北エリアへの影響に特化して解説します。台風5号全体の勢力や、海外機関の予報を含む最新情報については、まずはこちらの総合情報ページをご覧ください。
→ 台風5号 最新情報|進路・勢力・防災対策まとめ
【最重要】点検を始める前に!命を守るための3つの大原則
家のことが心配で、すぐにでも確認したい気持ちはよく分かります。しかし、焦りは禁物です。点検作業には危険が伴います。まず、以下の3つの大原則を必ず守ってください。
原則①:絶対に屋根や高所には登らない
これが最も重要です。屋根は雨で濡れて滑りやすくなっていたり、台風のダメージで脆くなっていたりする可能性があります。ご自身で屋根に登っての点検は、転落の危険性が非常に高いため、絶対にやめてください。屋根の確認は、地上から見上げるか、双眼鏡を使う範囲に留めましょう。これは多くの自治体や専門家が強く推奨している安全ルールです。
原則②:電気のブレーカーは落としてから点検する
室内で雨漏りや浸水があった場合、漏電の危険性があります。家の中を点検する際は、まず分電盤のブレーカーを落としてから行動してください。水に濡れた家電やコンセントには絶対に触れないでください。
原則③:少しでも危険を感じたら、迷わず専門家を呼ぶ
「ミシッ」と家が鳴る、柱や壁に大きな亀裂がある、焦げ臭い匂いがするなど、少しでも異常を感じたら、すぐに点検を中止し、安全な場所に避難してください。そして、迷わず専門の業者に連絡しましょう。あなたの勘は、何よりも重要な危険信号です。
【印刷可】自分でできる!台風後の我が家 安全点検チェックリスト
上記の大原則を守った上で、ご自身で安全に確認できるチェックリストです。場所ごとに、見るべきポイントをまとめました。
①家の外周り(外壁・窓・基礎)のチェックポイント
- [ ] 外壁: サイディングの浮き、剥がれ、ひび割れはないか?
- [ ] 窓・サッシ: 窓ガラスにひび割れや破損はないか?サッシがガタついたり、鍵が閉まりにくくなっていないか?
- [ ] 基礎: コンクリート部分に大きなひび割れや、これまでなかった破損が起きていないか?
②庭・屋外設備(塀・カーポート・物置)のチェックポイント
- [ ] 塀・フェンス: ブロック塀やフェンスに傾きやひび割れはないか?
- [ ] カーポート・物置: 屋根パネルが飛んだり、柱が傾いたりしていないか?
- [ ] 給湯器・室外機: 転倒したり、配管が破損したりしていないか?
③室内(雨漏り・窓のガタつき)のチェックポイント
- [ ] 天井・壁: 天井や壁紙に、これまでなかったシミや濡れた跡はないか?
- [ ] 窓の内側: 窓枠やサッシ周りから雨水が侵入した形跡はないか?
- [ ] 押し入れ・クローゼット: 壁や天井からの雨漏りがないか、念のため確認する。
これを見つけたら即連絡!専門家を呼ぶべき危険なサイン
以下のサインを見つけた場合は、ご自身で判断したり、放置したりせず、すぐに専門の業者(工務店やリフォーム会社)に連絡してください。
【屋根・天井】瓦の大きなズレ、天井のシミ
地上から見上げた際に、明らかに瓦がズレていたり、無くなっていたりする場合。また、室内の天井に広範囲のシミがある場合は、屋根からの深刻な雨漏りの可能性があります。
【外壁・基礎】大きなひび割れ、家の傾き
外壁や基礎に、指が入るほどの大きなひび割れがある場合。また、ドアや窓が急に開け閉めしづらくなった場合は、家全体が歪んでいる危険性があります。
【電気・ガス】焦げ臭い匂い、異常音
ブレーカーを上げ直した際に焦げ臭い匂いがしたり、家電から異常な音がしたりする場合は、漏電や故障の可能性があります。すぐにブレーカーを落とし、電気工事業者などに連絡してください。
【実践ガイド】保険請求をスムーズに進める全手順
もし被害が見つかったら、保険請求の準備を始めます。この手順に沿って進めれば、スムーズに手続きができます。
STEP1:まずは保険会社に一本の電話を
修理業者を探すより先に、まずはご自身が契約している保険会社の事故受付窓口に連絡します。契約者名、被害の状況などを伝え、今後の手続きについて指示を仰ぎましょう。
STEP2:【最重要】請求を成功に導く「被害写真」の撮り方
写真は、保険金を正しく査定してもらうための最も重要な証拠です。片付けや修理の前に、必ず以下のポイントで撮影しておきましょう。
- 「家の全景」を撮る: どの部分が被害に遭ったかわかるように。
- 「被害箇所」に寄って撮る: 破損部分が具体的にわかるように。
- 「大きさがわかる」ように撮る: 可能であれば、メジャーなどを当てて撮影すると客観性が増します。
- 複数枚、様々な角度から撮る: 状況が多角的に伝わるように。
STEP3:修理業者から見積もりを取得する
保険会社への連絡後、修理業者を探し、被害状況を診断してもらい、修理の見積書を作成してもらいます。この見積書は保険金の請求に必要です。
STEP4:必要書類を提出する
保険会社から送られてくる「保険金請求書」に必要事項を記入し、STEP3の見積書やSTEP2の写真などの必要書類と共に提出します。
業者選びで後悔しないために。悪質な修理業者を見抜くポイント
被災後の不安な気持ちにつけこむ、悪質なリフォーム業者とのトラブルが増えています。大切な家と資産を守るため、以下のポイントを必ず覚えておいてください。
「無料点検」「保険金で自己負担ゼロ」は危険なサイン
「台風の被害調査で回っています。無料で点検しますよ」「保険金を使えば自己負担ゼロで修理できます」といった言葉で近づいてくる業者には、絶対にその場で契約してはいけません。国民生活センターの発表によると、これらをきっかけにした高額な手数料請求や、不要な工事契約のトラブルが多発しています。
契約前に確認!信頼できる業者選びの3つのチェックポイント
- 複数の業者から見積もりを取る: 必ず2〜3社から相見積もりを取り、金額や工事内容を比較検討しましょう。
- 会社の所在地や実績が明確か: 地元で長く営業している、評判の良い業者を選びましょう。建設業許可の有無も一つの目安です。
- 契約書の内容が明確か: 工事内容、期間、金額、保証内容などが具体的に書かれているか、契約前に隅々まで確認しましょう。
【公的情報】トラブルになった際の相談窓口
もし業者との間でトラブルになってしまった場合は、一人で悩まず、お近くの消費生活センターや、住宅リフォーム・紛争処理支援センターなどの公的機関に相談してください。
知っておきたい公的支援。「罹災証明書」のもらい方と使い方
保険とは別に、公的な支援を受けるために重要となるのが「罹災証明書」です。
罹災証明書とは?なぜ必要なのか
災害による住家の被害の程度を、お住まいの自治体が公式に証明する書類です。各種支援金の申請や、税金の減免、仮設住宅への入居申し込みなど、様々な公的支援を受ける際の必須書類となります。
【自治体別】申請から発行までの一般的な流れ
- お住まいの市区町村の役所の担当窓口(防災課など)に申請します。
- 申請後、自治体の職員が家屋の被害状況を現地調査します。
- 調査結果に基づき、「全壊」「半壊」などの被害程度が認定され、証明書が交付されます。
申請に必要な書類は自治体によって異なるため、まずはお住まいの自治体のウェブサイト等で確認しましょう。
台風後の家の修理・保険に関するよくある質問
- QQ1: 保険会社と修理業者、どちらに先に連絡すればいいですか?
- A
A1: 必ず保険会社が先です。先に修理業者と契約を結んでしまうと、保険金の支払いがスムーズにいかないなどのトラブルに繋がる可能性があります。まずは保険会社に連絡し、その後の手順について指示をもらうのが鉄則です。
- QQ2: 被害が小さくても保険金は請求すべきですか?
- A
A2: まずはご自身の火災保険契約の「免責金額(自己負担額)」を確認しましょう。例えば免責金額が10万円の契約で、修理の見積もりが5万円だった場合、自己負担額を下回るため保険金は支払われません。修理費用が免責金額を上回るかどうか、が一つの判断基準になります。
まとめ:安全第一で状況確認。信頼できる専門家と共に生活再建を
台風が過ぎ去った後、不安な気持ちで家のことを確認する手順について解説しました。
最も重要なことは、①二次災害に遭わないよう、安全を最優先すること、②片付けの前に、必ず被害状況の写真を撮っておくこと、そして③少しでも不安や危険を感じたら、迷わず信頼できる専門家に相談することです。
この記事のチェックリストが、あなたの安全な状況確認と、確実な生活再建への第一歩となることを心から願っています。
▼次のステップ:確認した被害で「保険金」を請求する
このチェックリストで家の被害状況を安全に確認できましたか?もし被害が見つかった場合、次に行うべきは保険会社への連絡です。どのような損害が補償の対象になるのか、具体的なケースをまとめたこちらの記事で確認し、スムーズな請求手続きに進みましょう。
→ 台風被害の保険適用は?火災保険・車両保険で補償されるケース一覧
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