「え、揺れてないのに…なんで津波注意報?」
スマホが緊急速報で鳴り響き、テレビには赤や黄色の警報表示。
でも、あなたの周囲は静かで、何の揺れも感じなかった――
そんなとき、「これは誤報?」「本当に逃げるべき?」と迷うのは、当然の反応です。
しかし、この“静かな恐怖”こそが、実は最も危険なのです。
実際、私たちがまったく揺れを感じないまま、遠く離れた場所の地震や海底噴火、海底地すべりによって津波が襲ってくるケースが存在します。
しかも、その情報は速報の一報だけでは分かりにくく、不安だけが長く続く状況になりがちです。
そこで本記事では、
- ✅ 地震がないのに津波が来る、不思議な3つの原因
- ✅ 2022年トンガ噴火で話題になった「気圧波」の正体
- ✅ 津波注意報が「解除」されるまでの流れと公式な基準
- ✅ 不安な時間を乗り切るための「正しい過ごし方」5ステップ
を、公的機関の情報と専門知見をもとに、実践目線でわかりやすく解説します。
※この記事では「地震がないのに津波が来る特殊なケース」について深掘りします。より一般的な津波注意報の基本や避難行動の全体像を知りたい方は、まずはこちらの総合ガイドをご覧ください。
→【総合ガイド】津波注意報とは?警報との違い、避難基準までを網羅解説
なぜ揺れないのに津波が?考えられる3つの原因
揺れを感じないのに津波がやってくる。その不思議な現象には、主に3つの原因が考えられます。どれも、通常の地震津波とは少し性質が異なるため、正しく理解しておくことが重要です。
原因①:はるか遠くで発生した巨大地震「遠地地震」
最も多い原因が、この「遠地地震」です。これは、日本から数千キロも離れた、例えばチリやアラスカといった外国の沖合で巨大な地震が発生し、それによって生じた津波が、何時間、場合によっては十数時間もかけて日本に到達する現象です。
地震の揺れ(地震波)は距離と共に減衰するため日本では感じませんが、津波のエネルギーはほとんど衰えることなく、広大な大洋を伝わってきます。これが、「揺れを感じないのに津波だけがやってくる」最大の理由です。(出典: 気象庁「津波について」)
原因②:海底で起きた大規模な「火山噴火」
海底にある火山が大規模な噴火を起こすと、その爆発的なエネルギーによって海水が大きく持ち上げられたり、噴火によって山体が崩壊したりすることで、津波が発生することがあります。
この場合も、噴火場所が遠ければ、揺れとして感じることはありません。
原因③:気づかぬうちに発生した「海底地すべり」
地震などのはっきりとした現象がなくても、海底の斜面が広範囲にわたって崩れる「海底地すべり」によって、大量の海水が動かされ、津波が発生する可能性があります。このタイプの津波は発生予測が非常に難しく、突発的に観測されることもあります。
【特殊事例】2022年トンガ噴火-世界を駆け巡った「気圧波」とは
2022年1月に南太平洋のフンガ・トンガ=フンガ・ハアパイ火山で発生した大規模噴火では、これまでの常識とは少し異なる現象が起きました。
この噴火では、爆発によって生じた「気圧の波(ラム波)」が、地球全体を驚異的な速さで駆け巡りました。この気圧の変化が世界中の海面を上下させ、日本でも予測より早く、かつ広範囲で潮位の変化が観測されたのです。この現象は、津波が水の波だけでなく、大気の振動によっても引き起こされ得ることを示し、津波予測の新たな課題として専門家を驚かせました。(出典: 気象庁 2022年トンガ火山噴火による潮位変化のメカニズム)
【実践ガイド】注意報解除までを安全・安心に過ごす5ステップ
「原因は分かった。でも、この不安な状況でどうすればいいの?」ここからは、注意報が解除されるまでの時間を、安全かつ少しでも安心して過ごすための具体的な5つのステップを解説します。
ステップ1:まずは落ち着いて「避難行動」を継続する
揺れを感じなかったとしても、津波注意報が発表されたという事実は変わりません。まずは、前回の記事で解説した通りの避難行動を継続してください。
津波が到達するまでには時間がある場合も
特に遠地地震の場合、津波の第1波が到達するまでには数時間以上の猶予があることも多いです。しかし、それは「まだ大丈夫」という意味ではありません。「安全に避難するための準備時間が与えられた」と前向きに捉え、慌てずに行動を開始しましょう。
自己判断で安全な場所から離れない
「もう大丈夫だろう」と自己判断で避難をやめ、海岸に近づいたり、自宅に戻ったりするのは絶対にやめてください。危険は、気象庁からの公式な解除発表があるまで去りません。
ステップ2:「信頼できる情報源」だけで最新情報を確認する
不安な時ほど、人は情報を求めますが、情報の「質」が何よりも重要です。
推奨:気象庁、自治体、NHK、大手新聞社サイト
最新かつ正確な情報は、必ずこれらの公的機関や信頼できる大手メディアから得るようにしてください。テレビ、ラジオ、そしてこれらの機関の公式サイトや防災アプリが最も信頼できます。
非推奨:真偽不明なSNS、個人のブログ
SNSには善意の情報も流れますが、誤情報やデマが爆発的に拡散されるリスクも伴います。不安を煽るような情報や、断定的な個人ブログの情報はうのみにせず、必ずステップ1で挙げた公的な情報源で裏付けを取るようにしてください。(出典: 内閣府防災情報「災害時のデマに注意」)
ステップ3:テレビの「L字画面」やラジオで見るべき・聞くべきポイント
テレビをつけていると表示される「L字画面」では、「各地の満潮時刻」「津波の到達予想時刻」「観測された津波の高さ」などが更新されます。特に「到達予想時刻」は、避難のタイムリミットを知る上で最も重要な情報の一つです。
ステップ4:SNSの情報はうのみにしない!デマの見抜き方
「〇〇で津波が堤防を越えたらしい」といった衝撃的な情報がSNSで流れてきても、すぐに信じないでください。まずは、発信者が誰か(公的機関か、個人か)、写真や動画に不自然な点はないか、他の信頼できるメディアも同じことを報じているか、を冷静に確認する癖をつけましょう。
ステップ5:家族や職場と安否確認・情報共有を行う
離れた場所にいる家族や、職場の同僚とは、安否確認を行いましょう。ただし、電話回線は混雑する可能性があるため、災害用伝言ダイヤル(171)やSNSのメッセージ機能などを活用するのが有効です。
この注意報、いつまで続く?解除の基準と時間の目安
先の見えない状況は不安を増大させます。ここでは、注意報が解除されるまでの見通しについて解説します。
どうなったら解除される?気象庁の公式な判断基準とは
気象庁は、日本国内および海外(ハワイの太平洋津波警報センターなど)の潮位観測データを24時間体制で監視しています。そして、観測データから「津波が十分に減衰し、災害のおそれがなくなった」と判断できた場合にのみ、津波注意報・警報を解除します。決して曖昧な予測で判断しているわけではないので、公式な発表を辛抱強く待ちましょう。
【過去事例】解除まで半日以上かかることも
明確な時間はケースバイケースですが、過去の遠地地震の事例では、津波の第1波が到達してから、完全に注意報が解除されるまでに半日(12時間)以上を要したこともあります。長時間にわたる可能性を覚悟し、落ち着いて過ごすことが大切です。
なぜ長時間に及ぶのか?その理由を解説
遠地地震による津波は、波の山から次の山までの間隔(周期)が非常に長いという特徴があります。そのため、第1波が去った後も、数時間にわたって繰り返し波が押し寄せ、海面が不安定な状態が長く続くことがあるのです。
揺れのない津波に関する、その他の疑問
- QQ1: 遠地地震による津波は、近くで起きる地震の津波と威力や性質が違いますか?
- A
A1: はい、違うことがあります。遠地地震の津波は、波の周期が非常に長い「長周期津波」となることがあります。一見、穏やかな海面の盛り上がりに見えても、非常に大きなエネルギーを持っており、港や湾の奥で急に高さが増すなど、予測が難しい振る舞いをすることがあります。
- QQ2: 津波注意報が出ている間、仕事や学校はどうすればいいですか?
- A
A2: 自治体や、ご自身の所属する会社・学校からの公式な指示に従うのが基本です。安全が最優先ですので、自己判断で無理に出勤・登校することは避け、公式な連絡を待ちましょう。
- QQ3: 信頼できる情報がなくて不安な時は、どこに問い合わせればいいですか?
- A
A3: まずは、お住まいの市区町村の役場(防災担当課)に問い合わせるのが確実です。電話が繋がりにくい場合は、自治体の公式サイトや公式SNS(X アカウントなど)で情報が発信されていないか確認してみましょう。
まとめ:原因を正しく知り、落ち着いて解除を待つ
この記事では、地震がないのに津波注意報が出る原因と、その不安な時間を乗り切るための具体的な過ごし方について解説しました。
本記事のポイント
▼次のステップ:基本的な避難行動を再確認する
今回は特殊な津波の原因を学びましたが、どのような原因であれ、発表された際に取るべき避難行動の原則は同じです。
いざという時に迷わないよう、具体的な状況別の行動指針をまとめた実践ガイドで、基本の備えを万全にしておきましょう。
→【実践ガイド】津波注意報が出たらどうする?場所別の避難方法とNG行動
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