「円安で金価格が過去最高!」というニュース。でも

「なぜ?」「どう計算するの?」
と聞かれると、意外と答えられないものですよね。国際的な重量単位「トロイオンス」や、計算に必須の為替レート「TTS」といった専門用語に、何のことかさっぱり…と敬遠していた方もいるかもしれません。

この記事では、そんなあなたの疑問を解消するため、金価格 ドル円 計算の全てを、誰でもわかるようにステップ・バイ・ステップで解説します。
国際的な重量単位「トロイオンス」や、計算に必須の為替レート「TTS」といった専門用語の意味から、具体的な換算式、そして円安の影響が一目でわかるシミュレーションまで、この記事一本でマスターできます。
金融機関や業界団体の公表データを基に、プロが使う正確な方法を解説するのでご安心ください。専門用語だらけで敬遠していた金価格の計算が、驚くほどシンプルに感じられるようになります。
この記事でわかること
- 円安で金価格が上がる理由が計算式でわかる
- ドル建て価格を円建てグラム単価に換算できる
- 専門用語「トロイオンス」「TTS」をマスター
- 為替変動による価格への影響をシミュレーション
- なぜ「仲値」ではなく「TTS」で計算するのか
※この記事では「ドル円での価格計算」に特化して解説します。そもそも「金の価格決定」の全体像を把握したい方は、まずはこちらの総合記事をご覧ください。
→ 金の価格の決め方とは?誕生から価格決定までの全プロセスを解説

なぜ?金価格の計算に「ドル円」が欠かせない理由
ここでは、金価格の計算において、なぜ「ドル円」という為替レートが不可欠なのか、その基本的な理由を解説します。
世界の金は「ドル建て」で取引されている
意外と知られていませんが、世界の金取引は、ほとんどが米ドルを基準に行われています。ニューヨークやロンドンといった主要な金市場では、金の価格は「1トロイオンスあたり何ドル」という形で提示されるのが国際的な標準です。(出典: unbanked)
日本で買うときは「円」に換算する必要がある
しかし、私たちが日本国内で金を購入したり売却したりする際には、当然ながら日本円で取引を行います。そのため、国際的なドル建ての金価格を、日本円の価格に換算するプロセスが必要となるのです。
だから、ドルと円の交換比率(ドル円)が価格を左右する
このドル建て価格を円建て価格に変換する際に、不可欠となるのが「ドル円」の為替レートです。
ドル円レートが変動すれば、国際的な金価格が変わらなくても、日本国内での円建て金価格は大きく変動します。
特に円安が進むと、同じ量の金を買うためにより多くの円が必要になるため、円建て金価格は上昇する傾向にあります。

データを整理していて改めて感じたのは、金価格が「ドル建て」であること自体が、いかにアメリカが世界の基軸通貨国であるかの証左だという点です。金の価格一つとっても、世界経済の大きな構造が見えてくるのは面白いですね。
金価格の計算に必要な3つの要素
次に、ドル建ての国際金価格を円建てのグラム単価に換算するために、押さえておくべき3つの重要な要素を整理しましょう。
要素①:国際価格(ドル建て / トロイオンス)
金価格の計算の出発点となるのが、国際市場で決定されるドル建ての金価格です。これは通常、「1トロイオンスあたり何ドル」という形で示されます。
この国際価格は、世界の需給バランスや経済情勢、地政学リスクなど、様々な要因によって日々変動しています。
要素②:重量単位(トロイオンス → グラム)
国際的な金取引で使われる「トロイオンス」という単位は、私たちに馴染みのある「グラム」とは異なります。正確な計算のためには、このトロイオンスをグラムに換算する必要があります。
【用語解説】トロイオンス
主に金や銀などの貴金属取引で使われる国際的な重量単位です。1トロイオンスは正確には31.1034768グラムと日本の計量法で定義されています。(出典: jpx)
要素③:為替レート(ドル → 円)
そして、ドル建ての価格を円建てに変換するために不可欠なのが、ドルと円の交換比率を示す為替レートです。特に、金地金などの現物取引では、後述する「TTS」というレートが用いられます。
▼あわせて読みたい:計算の起点「国際価格」の決まり方
今回の計算の出発点となった「ドル建て国際価格」が、そもそもどのように決まるのか。その中心地であるロンドン市場の仕組みを、こちらの記事で深く知ることができます。
→ なぜロンドンが中心?世界のロンドン金価格が決まる仕組みを解説

【実践】ドル建て価格を円建てグラム単価に換算する計算式
ここでは、いよいよ具体的な計算式を使って、ドル建ての国際金価格を円建てのグラム単価に換算するプロセスをステップ・バイ・ステップで解説します。
ステップ1:ドル建て価格を「グラム単価」に変換する
まず、国際価格で示される「1トロイオンスあたりのドル価格」を、「1グラムあたりのドル価格」に変換します。これは、1トロイオンスが約31.1035グラムであることを利用して、割り算で求められます。
計算式の一部1グラムあたりのドル価格 = ドル建て価格 ÷ 31.1035
ステップ2:グラム単価(ドル)を「円」に換算する
次に、ステップ1で求めた「1グラムあたりのドル価格」を、為替レート(TTS)を使って日本円に換算します。これにより、「1グラムあたりの円価格」が算出されます。
計算式の一部1グラムあたりの円価格 = 1グラムあたりのドル価格 × TTS(円/ドル)
完成!これが円建てグラム単価の計算式
上記の2つのステップを組み合わせると、以下のシンプルな計算式が完成します。この式を覚えておけば、いつでも自分で金価格を計算できるようになります。
円建てグラム価格の計算式円建てグラム価格 = (ドル建て価格 ÷ 31.1035) × TTS(円/ドル)

この計算式、実は金だけでなくプラチナなど他の貴金属にも応用できる、意外と汎用性の高いものなんです。一度覚えてしまえば、色々な場面で役立つ知識と言えるでしょう。
シミュレーション:円安で金価格はいくら上がる?
計算式を理解したところで、実際に為替レートが変動した場合に、円建て金価格がどのように変化するのかをシミュレーションしてみましょう。国際価格が同じでも、為替レートによって国内価格が大きく変わることが実感できるはずです。
ケース1:1ドル110円の場合のグラム単価
国際金価格が「1トロイオンスあたり3,500ドル」で、為替レートが「1ドル=110円」の場合を想定します。
計算(3,500ドル ÷ 31.1035) × 110円 = 約12,370円/グラム
この場合、1グラムあたりの金価格は約12,370円となります。
ケース2:1ドル150円の場合のグラム単価
次に、国際金価格は同じ「1トロイオンスあたり3,500ドル」ですが、為替レートが「1ドル=150円」に円安が進んだ場合を想定します。
計算(3,500ドル ÷ 31.1035) × 150円 = 約16,870円/グラム
この場合、1グラムあたりの金価格は約16,870円となり、ケース1と比較して大幅に上昇していることがわかります。
比較:為替が40円動くと、価格はこれだけ変わる
上記のシミュレーションから、国際価格が同じ3,500ドル/トロイオンスであっても、為替レートが110円から150円へ40円変動するだけで、1グラムあたりの金価格が約4,500円も上昇することがわかります。
為替1円の変動が1グラム価格に与える影響
為替が1円変動すると、1グラムあたりの金価格は約112.6円変動します。もし1,000グラム(1kg)の金を保有していれば、為替が1円動くだけで約11万円もの評価額が変わる計算になります。(出典: nakaoka-inc)

こうしてシミュレーションしてみると、国際価格が同じでも為替レートだけでこれほど国内価格が変わるのかと、改めて驚かされますよね。
なぜ仲値じゃない?計算で「TTS」を使うべき理由
金価格の計算で「TTS」を使うべきと解説しましたが、「ニュースで見る為替レート(仲値)とは違うの?」と疑問に思った方もいるかもしれません。ここでは、その違いと、なぜTTSが重要なのかを明確にします。
「仲値(TTM)」とは?ニュースで見る基準レート
「仲値(TTM:Telegraphic Transfer Middle Rate)」とは、銀行が顧客と外貨を売買する際の基準となるレートです。
これは、銀行間取引のレートを参考に、各銀行が毎日午前10時頃に決定・公表するもので、ニュースなどで一般的に報じられる為替レートとして知られています。
「TTS」とは?私たちが実際に支払う手数料込みのレート
一方、「TTS(Telegraphic Transfer Selling rate:対顧客電信売相場)」とは、銀行が顧客に外貨(この場合はドル)を売る際に適用する為替レートです。
仲値に銀行が設定する為替手数料(スプレッド)が上乗せされているため、仲値よりも高くなります。私たちが金地金を購入する際にドルに換金する場合など、実際に外貨を購入する際に適用されるのはこのTTSレートです。(出典: exiap)
【比較表】TTS vs TTM どっちをいつ使う?
| 指標 | TTS(対顧客電信売相場) | 仲値(TTM) | 主な違い・用途 |
|---|---|---|---|
| 計算公式 | 地金・現物取引で主流 | 銀行間の参考値 | TTSは地金売買での実勢に近い |
| 公表主体 | 銀行など金融機関 | 銀行など金融機関 | 公表時刻・手数料反映あり |
| 価格変動幅 | 手数料含み広がりやすい | 比較的安定 | 実務ではTTSを用いることが多い |

ただし、注意したいのは、これはあくまで金地金など現物取引の場合だという点です。証券会社を通じた金ETFやFXなど、金融商品によっては仲値に近い、より有利なレートで取引できる場合もあります。
金価格の計算に関するよくある質問(FAQ)
ここでは、金価格の計算に関してよくある質問とその回答をまとめました。
- QQ1: 消費税はどのタイミングでかかりますか?
- A
A1: 国内で金地金を購入・売却する際に、最終的な価格に対して消費税が課税・還付されます。
- QQ2: 計算結果と実際の小売価格が違うのはなぜですか?
- A
A2: 小売価格には、計算された価格に加えて、各販売業者の手数料(スプレッド)が上乗せされているためです。
- QQ3: 毎日計算するのが面倒です。簡単な方法はありますか?
- A
A3: 各地金商の公式サイトや、金融情報サイトでリアルタイムの円建て価格が公表されています。しかし、仕組みを理解しておくことが重要です。
まとめ:計算式を理解すれば円安時代の金投資がわかる
今回は、国際的なドル建て金価格を日本の円建てグラム単価に換算する計算方法について、その仕組みと円安が与える影響を徹底的に解説しました。
金価格ドル円計算の重要ポイント【総復習】
- 国際価格の基準: 世界の金価格は「1トロイオンスあたりドル」で取引されている。
- 換算の必要性: 日本で取引する際は、ドル建て価格を円建てグラム単価に換算する必要がある。
- 計算式:
円建てグラム価格 = (ドル建て価格 ÷ 31.1035) × TTS(円/ドル) - 為替の影響: 円安が進むと、国際価格が同じでも円建て金価格は上昇する。
- TTSの重要性: 実際の取引では、手数料込みの「TTS」レートを用いるのが実態に近い。
この知識をどう活かすか

ここまで見てきたように、金価格の計算は、単なる数字遊びではありません。世界経済の動きと自分の資産がどう繋がっているかを具体的に理解するための、「解像度を上げるツール」と言えるでしょう。

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